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野球選手はなぜ腰痛が起こる?|練習量・フォーム・成長期・身体の特徴を解説

野球選手の腰痛について、競技量・野球動作・成長期・身体機能・病態・心理的要素を整理したインフォグラフィック 腰痛・分離症

野球選手の腰痛は、「フォームが悪いから」「体幹が弱いから」といった一つの原因だけで説明できるとは限りません。

青少年アスリートでは、競技参加、競技量・強度、年齢など、複数の要素と腰痛との関連が報告されています。一方で、研究によって対象や腰痛の定義、調査方法が異なるため、これらをそのまま個人の「原因」と決めることはできません。[1][2

野球では、投球や打撃などの動作によって腰部に機械的な負荷が生じますが、特定の動作やフォームだけで腰痛の発生を説明することもできません。3

この記事では、野球選手の腰痛を考えるときに確認したい、

競技負荷・野球動作・成長期・身体機能・腰椎分離症・心理的要素

について、医学的根拠をもとに整理します。

この記事のポイント

・野球選手の腰痛は、一つの原因だけで説明できないことがある
・競技量や強度は腰痛と関連する可能性がある
・投球や打撃では腰部に機械的負荷が生じる
・「フォームが悪い」「体幹が弱い」と単純に決めつけない
・成長期では年齢や発達段階も考慮する
・腰椎分離症など特定の病態が関係することもある


野球選手の腰痛は「1つの原因」だけでは説明できない

まず知っておきたいのは、腰痛は一つの病気ではないということです。

腰痛には、筋肉や関節、椎間板、腰椎分離症など、さまざまな病態が関係する可能性があります。

また、同じ野球をしていても、すべての選手が腰痛になるわけではありません。

そのため、腰痛を考えるときには、

  • どれくらい野球をしているのか
  • どんな動作を繰り返しているのか
  • 年齢や成長段階はどうか
  • 身体にはどのような特徴があるか
  • 腰椎分離症などの病態がないか
  • 痛みが長引いている場合は心理面に問題がないか

など、複数の視点を組み合わせる必要があります。

青少年アスリートを対象とした80研究の系統的レビュー・メタ解析では、競技参加、競技量・強度、年齢などが腰痛の潜在的なリスク因子として報告されています。ただし、研究間の異質性は大きく、これらをそのまま個人の腰痛の「原因」とすることはできません。[1


野球選手の腰痛に関係する主な6つの要素

野球選手の腰痛を理解するときは、次の6つの視点から考えると整理しやすくなります。

① 競技量・練習強度

どれくらいの頻度・強度で野球をしているか。

② 投球・打撃などの野球動作

野球には、体幹や骨盤を使った回旋・伸展を伴う動作があります。

③ 成長期・身体の発達

小学生から高校生にかけては、身体そのものが変化していきます。

④ 身体機能

下肢の柔軟性、股関節の可動域、体幹・骨盤の動きなどです。

⑤ 腰椎分離症などの病態

腰痛の背後に、特定の疾患が存在する場合があります。

⑥ 心理・環境的要素

痛みへの不安などが、腰痛の経過に関係することがあります。

ここで重要なのは、これらを**「腰痛の原因ランキング」として考えないこと**です。

あくまで、腰痛を考えるための視点です。


練習量が多いと腰痛になる?

競技量・強度は、腰痛と関連する可能性があります

青少年アスリートを対象とした系統的レビュー・メタ解析では、スポーツへの参加や競技量・強度などが腰痛の潜在的なリスク因子として報告されています。[1

また、競技スポーツへの参加期間が長い若年者ほど腰痛経験の割合が高かったという日本の研究もあります。ただし、この研究は大学入学時の学生4,667人を対象とした横断研究であり、長期間の競技参加が腰痛を直接引き起こしたことを証明するものではありません。[2

そのため、

練習量が多い

必ず腰痛になる

という単純な考え方はできません。

大切なのは、競技負荷だけでなく、その選手がどのような状態で競技を続けているかを考えることです。


投球や打撃で腰に負担がかかるの?

野球では腰部への機械的負荷が生じます

野球の投球や打撃では、体幹と骨盤を使った回旋・伸展などの動作が繰り返されます。

野球の慢性腰痛を扱ったレビューでは、投球や打撃などの野球特有の動作、腰部への機械的負荷、動作のタイミングなどが腰痛との関係を考える要素として検討されています。[3]

ただし、同じレビューでも、野球の動作と腰痛発生のメカニズムにはまだ不明な点があるとされています。[3

そのため、

「野球の回旋動作があるから腰痛になる」

とは言えません。

正確には、

野球の競技特性によって腰部に一定の機械的負荷が生じる一方、その負荷と腰痛の関係は単純ではない

と考えるのが適切です。


「フォームが悪いから腰痛」は本当?

フォームだけで腰痛の原因を決めることはできません

腰痛になると、

「フォームが悪いからだ」

と考えたくなるかもしれません。

しかし、研究からは、特定のフォームを見ただけで「これが腰痛の原因」と判断できるわけではありません。

2025年の研究では、腰痛歴のある経験豊富な野球選手13人と、腰痛歴のない12人を比較し、バッティング時の体幹・骨盤の動きに違いが報告されました。[4

ただし、この研究は25人を対象とした横断研究です。

つまり、

動きの違いが腰痛につながったのか

それとも、

腰痛の経験によって動きが変化したのか

までは分かりません。

したがって、

特定のフォーム=腰痛の原因

と決めることはできません。


成長期の野球選手は、なぜ腰痛に注意が必要?

年齢や発達段階も考慮する必要があります

小学生から高校生にかけては、身体が大きく変化する時期です。

日本の6〜15歳の若年スポーツ選手7,277人を対象とした研究では、腰痛のポイント有病率は年齢とともに増加し、13〜14歳で13.5〜14.8%となっていました。[5

また、子ども・青年期の腰痛に関するsystematic reviewでは、年齢が高いことや競技スポーツへの参加が腰痛と比較的一貫して関連していました。[2

ただし、

「成長期だから腰痛になる」

という意味ではありません。

成長期では、年齢や身体の発達段階そのものを腰痛を考える際の重要な背景として見ることが大切です。


体幹が弱い・体が硬いから腰痛になる?

身体機能は、腰痛を考える材料の一つです

「体幹が弱い」

「股関節が硬い」

「ハムストリングが硬い」

という話は、野球選手の腰痛でよく聞かれます。

実際、高校野球選手335人を対象とした前向きコホート研究では、1年間の追跡で296人が調査を完了し、そのうち147人が腰痛を経験しました。非投球側のハムストリングtightnessは、その後の腰痛と有意に関連していました。[6

また、6〜16歳の野球選手1,215人を対象とした研究では、11〜14歳の選手でheel-to-buttock test陽性と腰痛との関連が報告されています。[7

ただし、これらの研究から、

「ハムストリングが硬いから腰痛になった」

「体が硬いから腰痛になった」

と、個人の原因を決めることはできません。

身体機能の特徴は、

腰痛の原因を一つに決めるためではなく、現在の身体状態を評価するための材料の一つ

として考えるのが適切です。


体幹が弱いから腰痛、とは限らない

身体機能については、「弱いところを探せば腰痛の原因が分かる」と考えないことも大切です。

例えば、身体機能と腰痛に関連が見つかったとしても、その特徴が腰痛の原因だったのか、腰痛に伴って動作や身体機能が変化したのかは、研究デザインによって分からないことがあります。

実際、青年期の非特異的腰痛に関する系統的レビューでも、体幹筋持久力などとの関連が示される一方、前向き研究の不足が指摘されています。[8

そのため、

「この筋肉を鍛えれば腰痛の原因を解決できる」

という単純な考え方にも注意が必要です。


腰椎分離症は野球選手の腰痛に関係する?

腰椎分離症は、成長期野球選手で重要な一病態です

成長期の野球選手では、腰痛の背後に腰椎分離症が存在することがあります。

男子中学生・高校生野球選手171人を対象にMRIで早期腰椎分離症を調べた研究では、

  • 腰痛が4週間以上続く
  • 走ると腰痛が支障になる
  • 片側から始まった腰痛
  • 棘突起の圧痛

などとの関連が報告されています。[9

ただし、

「4週間腰が痛い=腰椎分離症」

という意味ではありません。

これは、早期腰椎分離症と特定の症状・所見との関連を示した研究です。

腰椎分離症の病態、病期、検査などについては、以下の記事で詳しく解説します。

野球選手の腰椎分離症とは?


痛みが長引くと、心理面も関係する?

腰痛が長引く場合には、心理的な要素も考えます

腰痛は身体だけの問題とは限りません。

小児から若年成人までを対象としたsystematic review・メタ解析では、心理的ストレスや感情への対処の問題などが、その後の腰痛と関連する可能性が示されています。[10

また、日本の高校野球選手59人を1年間追跡したpilot studyでは、慢性腰痛の選手で腰椎分離症やkinesiophobia(運動恐怖)との関連が報告されています。[11

ただし、ここでも、

「ストレスが腰痛の原因」

と単純化するのは適切ではありません。

心理的な要素は、腰痛の原因を一つに決めるためではなく、痛みが長引いている選手を理解するための視点として考えます。


結局、野球選手の腰痛はなぜ起こる?

ここまでを整理すると、

野球選手の腰痛は、一つの原因だけで説明できるとは限りません。

競技量や競技強度、投球・打撃などの動作、年齢や発達段階、身体機能、腰椎分離症などの病態、心理・環境的要素など、さまざまな視点から考える必要があります。[1][2][3][9

ここで重要なのは、これらを「原因の足し算」と考えないことです。

イメージとしては、

競技負荷

野球動作

成長・発達

身体機能

個人差・既往

病態

などを、

「腰痛を考えるときに確認する要素」

として整理するほうが適切です。


「フォームが悪い」「体幹が弱い」と決めつけないことが大切

腰痛になったとき、

「フォームが悪いんだ」

「体幹が弱いんだ」

「体が硬いんだ」

と、一つの理由に決めてしまうと、本当に確認すべきことを見落とす可能性があります。

特に成長期では、腰椎分離症など特定の病態が関係することもあります。

そのため、

「原因を一つ探す」より、「どんな症状があり、どのような競技負荷があり、どのような状態が考えられるか」を整理する

ことが大切です。


野球選手の腰痛で確認したいこと

腰痛があるときは、まず次のような情報を整理してみましょう。

競技

どのくらい練習している?

投球、打撃、守備、走塁のどの動作で症状が出る?

症状

いつから痛い?

どの動きで痛い?

痛みは強くなっている?

経過

一度よくなったのに、また痛くなった?

休んでも改善しない?

日常生活

学校生活や着替え、睡眠に影響している?

こうした情報を整理することが、腰痛を考える第一歩になります。

痛みが続く、悪化する、競技や日常生活に支障がある場合には、「フォームの問題」と自己判断せず、医療機関への相談を検討してください。

野球選手の腰痛で病院に行く目安


まとめ

野球選手の腰痛は、

「フォームが悪いから」
「体幹が弱いから」
「体が硬いから」

と、一つの理由だけで説明できるとは限りません。

競技量・競技強度、投球や打撃などの野球動作、成長期、身体機能、腰椎分離症などの病態、心理・環境的要素などを複数の視点から考えることが重要です。[1]〜[11

そして、腰痛になったときに大切なのは、

「犯人を一つ探すこと」ではなく、「今どのような状態なのかを整理すること」

です。

特に成長期の野球選手では、身体の発達や競技負荷に加えて、腰椎分離症などの病態も考慮する必要があります。


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3.参考文献

[1] Wall J, Meehan WP 3rd, Trompeter K, et al. Incidence, prevalence and risk factors for low back pain in adolescent athletes: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2022;56(22):1299-1306. doi:10.1136/bjsports-2021-104749. (PubMed)


[2] Calvo-Muñoz I, Kovacs FM, Roqué M, Gago Fernández I, Seco Calvo J. Risk Factors for Low Back Pain in Childhood and Adolescence: A Systematic Review. Clin J Pain. 2018;34(5):468-484. doi:10.1097/AJP.0000000000000558. (PubMed)


[3] Wasser JG, Zaremski JL, Herman DC, Vincent HK. Prevalence and proposed mechanisms of chronic low back pain in baseball: part i. Res Sports Med. 2017;25(2):219-230. doi:10.1080/15438627.2017.1282361. (PubMed)


[4] Kitabayashi K, Tamura A, Saito M, Nishida Y. Characteristics of trunk and pelvic kinematics during batting motion in baseball players with low back pain history. J Sports Med Phys Fitness. 2025;65(7):924-931. doi:10.23736/S0022-4707.25.16489-X. (PubMed)


[5] Low Back Pain in Young Sports Players: A Cross-sectional Study in Japan. PMID:34384092. (PubMed)


[6] Kato K, Otoshi KI, Tominaga R, et al. Influences of limited flexibility of the lower extremities and occurrence of low back pain in adolescent baseball players: A prospective cohort study. J Orthop Sci. 2022;27(2):355-359. doi:10.1016/j.jos.2021.01.008. (PubMed)


[7] Kato K, Otoshi K, Tominaga R, et al. Age-Related Differences in the Limited Range of Motion of the Lower Extremity and Their Relation to Low Back Pain in Young Baseball Players: A Cross-Sectional Study of 1215 Players. Sports Med Open. 2023;9:26. doi:10.1186/s40798-023-00572-w. (PubMed)


[8] A systematic review on quantifiable physical risk factors for non-specific adolescent low back pain. PMID:30010152. (PubMed)


[9] Kato K, Otoshi K, Kobayashi K, et al. Clinical characteristics of early-stage lumbar spondylolysis detected by magnetic resonance imaging in male adolescent baseball players. J Orthop Sci. 2024;29(1):35-41. doi:10.1016/j.jos.2022.10.014. (PubMed)


[10] Beynon AM, Hebert JJ, Hodgetts CJ, Boulos LM, Walker BF. Chronic physical illnesses, mental health disorders, and psychological features as potential risk factors for back pain from childhood to young adulthood: a systematic review with meta-analysis. Eur Spine J. 2020;29(3):480-496. doi:10.1007/s00586-019-06278-6. (PubMed)


[11] Nakao H, Imai R, Hamada T, et al. Factors affecting chronic low back pain among high school baseball players in Japan: A pilot study. PLoS One. 2023;18(1):e0280453. doi:10.1371/journal.pone.0280453. (PubMed)


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