野球肩とは?症状・原因・治療・予防・投球復帰まで徹底解説

野球肩

野球をしている子どもや選手から、

「肩が痛い」

と言われたとき、保護者や指導者はどうすればよいのでしょうか。

「投げすぎかな」

「フォームが悪いのかな」

「少し休めば大丈夫かな」

と考えるかもしれません。

しかし、最初に知っておきたいのは、野球肩は一つの病気の名前ではないということです。

投球障害肩には、腱板、関節唇、上腕二頭筋長頭腱、肩後方組織、肩甲胸郭機能など、さまざまな組織・機能が関係する病態があります。

投球障害肩は投球に伴う肩関節疾患の総称であり、病態は多岐にわたると整理されています。

さらに、小学生・中学生などの成長期では、成人の投球障害肩とは異なる問題を考える必要があります。 代表的なのが、近位上腕骨の成長部に関連するLittle League Shoulderです。

2021年のsystematic reviewでは、子ども・青年のLittle League Shoulderについて、診断・治療・競技復帰に関する研究をまとめています。[5

一方で、長期間投球を続けた選手の肩には、可動域や筋力、組織に競技への適応変化が生じることも分かってきました。

2025年のsystematic reviewでは、投球肩では単純な「内旋が硬くなった」という説明だけでは不十分で、軟部組織と骨形態を分けて考える必要性が示されています。[6

だからこそ、

「肩が痛い」→「野球肩」

と単純に結びつけるのではなく、

  • どこが痛いのか
  • いつ痛いのか
  • 成長段階はどうか
  • どれくらい投げているのか
  • 疲労していないか
  • 身体全体がどう動いているか

を整理することが重要です。

この記事では、野球肩について、

肩の構造 → 投球で起こること → 症状 → 成長期 → 原因・リスク → 受診・検査 → 治療 → 予防 → 投球復帰

の順に解説します。

※この記事は一般的な医学・スポーツ医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。

肩の痛みが続く場合や、投球に支障がある場合は医療機関に相談してください。


この記事を読むと分かること

  • 野球肩・投球障害肩とは何か
  • なぜ野球肩を一つの病気として考えられないのか
  • 投球では肩にどのような動き・負荷が生じるのか
  • 「どこが痛いか」だけでなく「いつ痛いか」が重要な理由
  • 成長期の選手で注意したいLittle League Shoulderとは何か
  • 投球負荷や疲労と肩障害をどう考えるのか
  • 肩甲骨・体幹・股関節などの運動連鎖をどう捉えるのか
  • 「肩が硬い=野球肩」ではない理由
  • 病院では何を評価するのか
  • X線・超音波・MRIはどのように使い分けるのか
  • 野球肩の治療とリハビリの基本
  • 投球復帰をどのように進めるのか
  • 小学生・中学生・高校生で何に注意するのか
  • 現在の研究で分かっていること、まだ分からないこと

1.野球肩とは?

野球肩は一つの病気ではありません

「野球肩」「投球障害肩」という言葉は、投球に関連して生じるさまざまな肩の疾患・障害をまとめて捉えるために使われます。

投球障害肩は投球に伴う肩関節疾患の総称であり、上腕二頭筋長頭腱炎、SLAP損傷、インターナルインピンジメントなど、複数の病態が含まれるとされています。

そのため、

野球肩=一つの病気

と考えるのではなく、

投球に関連して生じる複数の肩の問題をまとめて考える言葉

と理解することが大切です。

この違いによって、診断や検査、治療、投球復帰の考え方も変わってきます。


2.肩は「一つの関節」ではない

肩関節複合体として考える

「肩」というと、肩甲上腕関節をイメージしやすいかもしれません。

しかし実際には、

  • 肩甲上腕関節
  • 肩甲胸郭部
  • 肩鎖関節
  • 胸鎖関節

などが関係し、さらに胸郭・体幹も含めて上肢の動きが成立しています。

共有資料でも、肩甲上腕関節だけではなく、肩甲胸郭関節、肩鎖関節、胸鎖関節、体幹などが協調して動くことで、局所へのストレス集中を抑えるという考え方が示されています。

つまり、

肩の動きを肩関節だけで考えると、投球の仕組みを十分に説明できません。

これが野球肩を考えるうえでの基本となります。


3.投球では肩に大きな動きが生じる

投球では、腕が非常に大きな範囲で動きます。

一般的には、

ワインドアップ・コッキング

後期コッキング

加速期

ボールリリース

フォロースルー

という一連の動作として捉えます。

共有いただいた投球障害肩資料でも、コッキング期からフォロースルー期までの投球phaseによって、肩に生じる運動や症状が異なることが示されています。

そのため、

「肩を使いすぎた」

だけではなく、

「投球のどの場面で、どのような負荷が生じているのか」

を考える必要があります。


4.「どこが痛い?」だけでは十分ではない

野球肩では、まず「肩のどこが痛いか」を確認します。

しかし、それだけでは情報が足りません。

同じ肩痛でも、

  • 腕を後ろに引くと痛い
  • 腕を加速させると痛い
  • ボールを離す瞬間に痛い
  • 投げ終わってから痛い
  • 翌日に痛い

など、痛みが出るタイミングが違います。

投球障害肩の専門資料でも、痛みを生じる投球相は症例によって異なり、コッキング期に多いものの、コッキング期からフォロースルー期まで幅広いとされています。

したがって、

「どこが痛いか」+「いつ痛いか」

を一緒に確認することが、野球肩の評価では重要です。


5.野球肩にはどのような症状がある?

代表的な症状には、

  • 投球時の肩痛
  • 投球後の肩痛
  • 翌日まで残る痛み
  • 腕を上げたときの痛み
  • 腕を後ろに引いたときの痛み
  • 肩を動かしにくい
  • 肩の不安定感
  • 投球感覚の変化
  • 球速の低下
  • 肩周囲の疲労感

などがあります。

ただし、これらの症状だけで特定の病気を診断することはできません。

2025年の投球肩身体診察レビューでは、投球肩について、可動域、腱板、上腕二頭筋、関節唇、不安定性、肩甲骨運動などを総合的に評価することが整理されています。[8


6.成長期の野球肩は、大人と同じように考えない

成長途中の肩には、成人にはない特徴がある

小学生・中学生では、骨格が成熟していません。

そのため、成人ではあまり問題にならない成長部への負荷を考える必要があります。

2025年の小児スポーツ肩障害レビューでも、小児・青年では成人とは異なる急性・オーバーユース肩障害を考慮する必要があると整理されています。[12

その代表例が、

Little League Shoulder

です。


7.Little League Shoulderとは?

Little League Shoulderは、投球に関連して生じる近位上腕骨の成長部の障害です。

2021年のsystematic reviewでは、23研究・266例が検討されています。

このレビューでは、休養期間や投球再開、競技復帰に関する研究がまとめられましたが、復帰基準やプロトコルには研究間でばらつきがあることも示されています。[5]

つまり、

「Little League Shoulderなら○週間休めば必ず復帰できる」

という一律の答えはありません。

ここで大切なこと

成長期の肩痛を、

「成長期だから仕方ない」

と片付けないことです。

繰り返す投球時痛や投球後の痛みがある場合には、病態を評価する必要があります。


8.日本の小学生野球選手でも肩痛は起こっている

日本のデータも重要です。

日本全国の小学生野球選手8,354人を対象とした全国調査では、前年に肩・肘痛がなかった7,894人のうち、過去1年間に**肩痛を経験した選手は8.0%**でした。[1

また、肘痛は12.3%、肩または肘の痛みは17.4%でした。[1

🔬 この研究から分かること

対象
日本全国の小学生野球選手8,354人

研究デザイン
全国質問票調査・後ろ向きコホート

主な結果
過去1年間の肩痛8.0%

この研究から言えること
日本の小学生野球選手では肩痛が一定の頻度で生じている。

この研究だけでは言えないこと
8.0%の選手がすべて医師によって「野球肩」と診断されていたこと。

これは野球肘の記事でも採用した重要な考え方です。

「肩痛8.0%」と「野球肩8.0%」は同じではありません。


9.野球肩はなぜ起こる?

野球肩を、

「投げすぎ」

だけで説明することも、

「フォームが悪い」

だけで説明することもできません。

考えるべき要素には、

  • 投球負荷
  • 疲労
  • 成長
  • 過去の障害
  • 身体機能
  • 肩の可動性
  • 筋力
  • 肩甲帯
  • 体幹・下肢
  • 投球動作
  • 競技環境

などがあります。

若年スポーツ選手の肩障害に関するsystematic reviewでは、筋力、可動性、肩甲骨機能、トレーニング負荷など複数の要素が検討されていますが、単一の要因だけで肩障害を説明できるわけではありません。[7


10.日本の中学生研究から見えること

日本の中学硬式野球選手47名を1年間追跡した前向きコホート研究では、14名が投球障害肩を発症しました。

肩・股関節・足関節の可動性については、群間で一律の有意差が認められませんでした。

一方、非投球側下肢HBD高値が発症に関連する危険因子として抽出されました。[2

この研究から、

「股関節が硬いから野球肩になる」

とは言えません。

一方、

「肩だけでなく全身の身体機能を評価する価値がある」

ことを考える材料にはなります。

この区別が大切です。


11.投球は「全身運動」

投球では、

下肢

骨盤

体幹

肩甲帯





という複数の身体部位が協調して動きます。

さまざまな資料でも、投球動作は身体全体を使った運動であり、下肢から上肢へと運動連鎖が生じることが整理されています。

また、成長期の投球障害への対応資料では、投球動作を運動連鎖による全身運動として捉え、あるphaseで見える問題に対して、それより前のphaseや下位の動作まで考える必要性が述べられています。

ただし、

運動連鎖がある=その部分が肩痛の原因

ではありません。

運動連鎖は、

「どこに負荷が集中している可能性があるのかを考えるための評価の視点」

として扱う必要があります。


12.「肩が硬い=野球肩」ではない

これは野球肩で非常に重要なポイントです。

長期間投球している選手には、投球側肩の可動域や筋力、骨形態などに競技への適応変化が生じることがあります。

2025年のsystematic reviewでは、投球肩において内旋可動域が反対側より低下する一方、軟部組織だけを考えた場合には、従来考えられていた内旋制限とは別の適応パターンが示唆されています。[6

したがって、

左右差がある=故障

とは限りません。

また、

肩が硬い=野球肩の原因

とも一律には言えません。

重要なのは、その変化が症状や機能障害と結びついているのかという点です。


13.「画像で異常がある=野球肩」でもない

投球選手では、長年の競技による適応変化が画像上にも現れることがあります。

2025年の研究では、プロ野球投手において肩と肘の慢性的な構造適応が関連していることも示されています。[9

したがって、

「MRIで何か見つかった」

だけで、

「それが痛みの原因」

と決めることはできません。

画像所見は、

症状

身体診察

投球歴

競技レベル

と合わせて解釈する必要があります。


14.肩の痛みがあるとき、投げ続けていい?

原則として、痛みを我慢した投球継続は避ける

肩の痛みが繰り返し出ている場合、

「軽く投げれば大丈夫」

「試合だけなら」

「投げ始めれば痛みがなくなる」

と自己判断して投球を続けることはおすすめできません。

特に成長期では、Little League Shoulderなど成人とは異なる病態があるためです。[5]

ここでも、

「投げられる」=「投げてよい」

ではないことを覚えておいてください。


15.こんなときは受診を考える

次のような症状が繰り返す場合は、整形外科などで評価を受けることをおすすめします。

  • 投球するたびに肩が痛い
  • 投球後も痛みが残る
  • 翌日まで痛みが続く
  • 痛みが徐々に強くなっている
  • 腕を動かしにくい
  • 日常生活でも痛い
  • 肩の不安定感がある
  • 明らかに球速が落ちた
  • 投球フォームが痛みのために変化した
  • 成長期の選手に繰り返す投球時痛がある

2025年の投球肩身体診察レビューでも、症状の聴取に加えて、可動域、筋力、腱板、上腕二頭筋、関節唇、不安定性、肩甲骨運動などを総合的に評価する必要性が整理されています。[8


16.何科を受診すればいい?

基本的には整形外科です。

可能であれば、

  • スポーツ整形外科
  • 小児・成長期のスポーツ障害を診る医療機関
  • 投球障害肩の診療経験がある医療機関

などを選択肢にしてください。


17.野球肩の検査

検査は、画像だけで診断するものではありません。

一般には、

問診

身体診察

必要に応じて画像検査

という流れで考えます。

身体診察では、

  • 可動域
  • 筋力
  • 腱板
  • 上腕二頭筋
  • 関節唇
  • 不安定性
  • 肩甲骨運動

などを評価します。[8

画像検査では、病態や年齢に応じて、

  • X線
  • 超音波
  • MRI

などが選択されます。

X線

骨や成長部などの評価に使われます。

超音波

腱や筋などを評価する場合に使われます。

MRI

腱板、関節唇、骨髄、成長部など、X線では評価しにくい組織を評価する場合があります。

ただし、

「MRIが最も詳しいから、全員MRI」

という考え方ではありません。

検査は、症状・身体診察・疑われる病態を踏まえて選択します。


18.野球肩の治療

野球肩の治療は、病態・年齢・症状・競技レベルによって異なります。

そのため、

「野球肩なら○週間休む」

という一律の治療期間を設定することはできません。

投球選手のリハビリテーションでは、正確な評価に基づき、可動性・筋力・持久力・パワーなどを段階的に回復させる多段階アプローチが推奨されています。[10


19.リハビリでは肩だけを見ない

投球障害に対するリハビリでは、

  • 肩関節
  • 肩甲帯
  • 体幹
  • 骨盤
  • 股関節
  • 下肢

などを必要に応じて評価します。

共有資料でも、投球動作のためのコンディショニングでは、身体各部位の機能だけでなく、動的安定性と動的可動性を考えることが重要とされています。

ただし、

「全身を鍛えれば野球肩は治る」

という単純な意味ではありません。

必要な機能を評価し、必要な部分に介入するという考え方が基本です。


20.野球肩の予防

野球肩の予防を考えるとき、重要なのは一つのトレーニングではありません。

投球負荷

  • 投球数
  • 投球強度
  • 連投
  • 年間の投球量

疲労

  • 腕の疲労
  • 全身疲労
  • 疲労した状態での投球

身体機能

  • 可動性
  • 筋力
  • 持久力
  • 肩甲帯
  • 体幹
  • 下肢

競技環境

  • 複数チーム
  • 試合・練習
  • ポジション
  • 年齢・成長段階

などを総合的に考えます。

2024年の投球障害予防に関するscoping reviewでは、後方肩の柔軟性や外旋筋強化などさまざまな予防介入が研究されていますが、一つの介入だけで野球肩を確実に防げるとする十分な根拠はありません。11

したがって、

「このストレッチをすれば野球肩にならない」

という説明は避けるべきです。


21.運動連鎖をどう考える?

投球障害を考えるうえで、運動連鎖は重要です。

さまざまな資料でも、下肢運動の後に体幹運動が始まり、その後に上肢運動が行われるという時間的な連動が示されています。

また、肩甲胸郭部には、肩甲上腕関節にかかるストレスを軽減する役割があるという考え方も示されています。

しかし、

下肢の問題

肩が痛くなる

という一本線の因果関係に置き換えることはできません。

日本の中学生研究でも、すべての関節可動性に差があったわけではなく、特定の指標だけが発症と関連していました。[2

だからこそ、

運動連鎖は「原因を決める道具」ではなく、「負荷の流れを考える評価の枠組み」

として使うことが重要です。


22.投球肩の「適応」と「障害」を分けて考える

野球肩を理解するうえで、今後さらに重要になる考え方があります。

それが、

適応と障害を分ける

ことです。

投球を長期間続けると、

  • 可動域
  • 筋力
  • 骨形態
  • 軟部組織

などに変化が生じます。

2025年のsystematic reviewでは、投球肩に慢性的な適応が生じることが示されています。[6

そのため、

左右差がある

MRIに変化がある

というだけでは、「ケガ」とは判断できません。

症状・身体診察・競技特性・画像を総合して判断します。


23.投球復帰は「痛みがなくなった日」からではない

痛みがなくなった=全力投球、ではありません

投球復帰では、

  • 症状
  • 可動域
  • 筋力
  • 持久力
  • パワー
  • 投球耐性
  • 病態

などを確認します。

Wilkら2025年のレビューでは、投球選手のリハビリテーションについて、strength・mobility・endurance・powerを段階的に回復させる多段階アプローチが示されています。[10

また、Da Silvaら2025年のレビューでは、投球再開前の基準を確認し、その後に段階的なthrowing programを進める考え方が示されています。[13


24.投球復帰の基本的な考え方

病態や医療者の判断によって異なりますが、考え方としては、

症状・病態の評価

身体機能の回復

投球以外の運動

軽い投球

距離・強度・投球量を徐々に増やす

通常練習

試合復帰

という流れになります。

特にLittle League Shoulderでは、2021年のsystematic reviewでも復帰基準やプロトコルに研究間のばらつきがありました。[5]

したがって、

「野球肩は○週間で復帰」

と一律に示すことはできません。


25.小学生・中学生・高校生で何が違う?

小学生

成長途中の骨格を考慮することが重要です。

特にLittle League Shoulderなど、成長期に特徴的な病態があります。[5

また、日本の全国調査でも小学生野球選手に肩痛が一定頻度でみられました。[1


中学生

成長と競技負荷の変化が重なる時期です。

日本の中学野球選手を対象とした前向き研究では、四肢の可動性・筋タイトネスと投球障害肩発症との関連が検討され、非投球側下肢HBD高値が危険因子として抽出されました。[2


高校生

投球強度や競技レベルが高くなる一方、投球肩には競技による適応も蓄積します。

したがって、

「成長期の障害」と「投球による慢性的な適応」の両方を考える

必要があります。[6]


26.選手・保護者・指導者ができること

選手

  • 肩の痛みを隠さない
  • 痛みを我慢して投げない
  • 疲労した状態で無理をしない
  • 投球量を把握する
  • 翌日の状態も確認する

保護者

  • 「成長期だから仕方ない」と決めつけない
  • 痛みを言いやすい環境をつくる
  • 投球数だけでなく休養や疲労も確認する
  • 痛みが繰り返す場合は受診を考える

指導者

  • 投球量を把握する
  • 連投や疲労を管理する
  • 複数チームでの活動を確認する
  • 痛みを訴えた選手に投球継続を求めない
  • 「投げられる=投げてよい」と考えない

27.野球肩について「分かっていること」と「まだ分からないこと」

テーマ現在の評価
野球肩は一つの病気か複数の疾患・障害を含む
成長期と成人同じではない
Little League Shoulder成長期の重要な投球障害
痛む場所重要だが場所だけでは診断できない
投球phase症状評価の重要な情報
投球負荷重要な管理対象
疲労障害リスクを考える重要な要素
肩の可動域一部は競技適応を反映する
左右差左右差だけでは障害と判断できない
肩甲骨機能評価対象だが単独原因とはいえない
運動連鎖全身評価の重要な枠組み
特定ストレッチ一律の予防効果は確立していない
特定筋トレ一律の予防効果は確立していない
フォームだけが原因単純化できない
画像異常=病気画像だけでは判断できない
痛みがなくなれば即復帰必ずしもそうではない
復帰基準病態によって異なる
LLSの復帰プロトコル研究間でばらつきがある

この「分かっていること/分かっていないこと」は、野球メディカルノートの医学情報における重要な特徴として今後も維持します。


28.よくある質問

Q1.肩が痛いのですが、少しなら投げてもいいですか?

痛みが投球と繰り返し関連している場合は、痛みを我慢して投球を続けないことをおすすめします。

成長期では成人とは異なる病態もあるため、痛みが続く場合は評価を受けてください。


Q2.肩が硬いから野球肩なのでしょうか?

そうとは限りません。

投球を続けている選手では、可動域に競技適応による変化が生じる場合があります。[6]

左右差だけで障害を判断することはできません。


Q3.フォームを直せば野球肩は防げますか?

フォームや身体の使い方は評価対象になりますが、フォームだけを野球肩の原因と断定することはできません。

投球負荷、疲労、身体機能、成長、競技環境などを総合的に考える必要があります。


Q4.MRIを撮れば原因が分かりますか?

MRIは重要な画像検査ですが、MRIだけで痛みの原因を決定できるとは限りません。

症状や身体診察、投球歴、競技特性などと合わせて解釈します。


Q5.Little League Shoulderは何週間休めば治りますか?

一律の期間はありません。

2021年のsystematic reviewでも、休養期間や競技復帰基準には研究間でばらつきがあります。[5]


Q6.痛みがなくなったらすぐ投球復帰できますか?

必ずしもそうではありません。

可動域、筋力、持久力、パワー、投球耐性などを確認し、段階的に投球量・強度を戻します。[10][13]


29.筆者の経験から

私自身も、子どもの頃に肩を痛めました

私自身、小学生の頃に肩が痛くなり、投げられなくなった経験があります。

当時は、

「なぜ痛いのか」

「休むべきなのか」

「身体のどこを見直せばいいのか」

ということを知りませんでした。

中学生では腰を痛め、高校では肩・肘・腰に痛みを抱えながら、だましだまし野球を続けていました。

その後、柔道整復師・鍼灸師として身体の構造や機能を学び、現在は鍼灸接骨院を経営しながら、草野球では投手としてプレーし、少年野球のコーチもしています。

今は、

  • 身体の状態
  • トレーニング
  • コンディショニング
  • 技術練習
  • 投球負荷
  • 休養

を考えながら野球を続けています。

だからこそ、子どもたちには、

痛くなってから身体を知るのではなく、痛くなる前から身体を知ってほしい。

そして、

痛くなったときには、我慢する前に「何が起きているのか」を知ってほしい。

と思っています。

この章は筆者自身の経験であり、医学研究の結果を示すものではありません。


30.この記事で最も覚えてほしい5つのこと

① 野球肩は一つの病気ではない

投球障害肩にはさまざまな疾患・障害があります。[4]

② 「どこが痛いか」だけでなく「いつ痛いか」が重要

投球phaseとの関係を含めて症状を確認することが重要です。

③ 成長期の肩は大人と同じではない

Little League Shoulderなど、成長期特有の病態があります。[5

④ 「肩が硬い」「フォームが悪い」だけで原因を決めない

投球肩には競技適応があり、障害は複数の要因から考える必要があります。[6

⑤ 痛みがなくなっただけで全力投球に戻らない

身体機能と投球耐性を確認し、段階的に復帰します。[10][13


31.次に読むべき記事

肩が痛い方へ

野球肩の症状|どこが・いつ・どんな動作で痛む?

子どもの肩痛が心配な方へ

子どもが肩を痛がったら病院に行くべき?

小学生の方へ

小学生の野球肩で知っておきたいこと

Little League Shoulderを詳しく知りたい方へ

Little League Shoulderとは?

原因を詳しく知りたい方へ

野球肩はなぜ起こる?成長・投球負荷・疲労・身体機能から解説

検査について知りたい方へ

野球肩の検査|X線・エコー・MRIの違い

予防について知りたい方へ

野球肩の予防方法

治療について知りたい方へ

野球肩の治療・リハビリの流れ

投球復帰について知りたい方へ

野球肩から投球復帰するまで


参考文献・情報源

[1]Takagishi K, et al. 2017

Shoulder and elbow pain in elementary school baseball players: The results from a nation-wide survey in Japan.
J Orthop Sci. 2017;22(4):682-686.
doi:10.1016/j.jos.2017.03.016.

PubMed|DOI

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[2]伊計拓真,坂槙航,筒井俊春,鳥居俊.2024

中学野球選手における投球障害肩発症に関連する四肢の可動性および筋タイトネス:1年間の前向きコホート研究.
日本臨床スポーツ医学会誌.2024;32(1):128-134.
doi:10.57474/jjcsm.32.1_128.

J-STAGE|DOI

中学野球選手における投球障害肩発症に関連する四肢の可動性および筋タイトネス:1 年間の前向きコホート研究
J-STAGE

[3]Gibson ES, et al. 2022

The Epidemiology of Youth Sport-Related Shoulder Injuries: A Systematic Review.

若年スポーツ選手の肩障害疫学・リスク因子に関するsystematic review。


[4]日本理学療法士協会 投球障害肩・肘班

投球障害肩・肘理学療法ガイドライン関連資料.

日本臨床スポーツ医学会誌
J-STAGE

[5]Bednar ED, et al. 2021

Diagnosis and Management of Little League Shoulder: A Systematic Review.
Orthop J Sports Med. 2021;9(7).
doi:10.1177/23259671211017563.

PubMed|PMC|DOI

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[6]Paul RW, et al. 2025

Chronic Adaptations of the Shoulder in Baseball Pitchers: A Systematic Review.
Am J Sports Med. 2025.

PubMed|DOI

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[7]若年スポーツ肩障害systematic review

若年スポーツ選手における肩障害の疫学・内的リスク因子に関するsystematic review。

日本臨床スポーツ医学会誌
J-STAGE

[8]Bi AS, Jazrawi LM, Cohen SB, Erickson BJ. 2025

The Physical Examination of the Throwing Shoulder.
Clin Sports Med. 2025;44(2):113-128.
doi:10.1016/j.csm.2024.05.002.

PubMed|DOI

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[9]Paul RW, et al. 2025

Chronic Structural Adaptations of the Shoulder and Elbow Are Correlated in Professional Baseball Pitchers.
Am J Sports Med. 2025;53(4):944-951.
doi:10.1177/03635465251317509.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[10]Wilk KE, Arrigo CA, Ivey M. 2025

Rehabilitation of the Shoulder and Elbow in the Throwing Athlete.
Clin Sports Med. 2025;44(2):249-272.
doi:10.1016/j.csm.2024.06.001.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[11]Karasuyama M, et al. 2024

Preventive interventions for throwing injuries in baseball players: a scoping review.
J Shoulder Elbow Surg. 2024.
doi:10.1016/j.jse.2023.12.008.


[12]Mergoum AM, et al. 2025

Identifying Acute and Overuse Injuries of the Shoulder in Pediatric Sports.
SN Compr Clin Med. 2025;7:407.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

[13]Da Silva AZ, Connelly JW, Chalmers PN. 2025

Return to Play Throwing Programs.
Clin Sports Med. 2025;44(2):273-289.
doi:10.1016/j.csm.2024.05.005.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

専門資料

  • 『投球障害肩の診かた―機能解剖学的アプローチ』
  • 『成長期の投球障害への対応とアプローチ』
  • 『理学療法士から見た投球障害の対応(2)―運動連鎖を取り入れた投球障害の対応』
  • 『投球動作のためのアスレティックトレーニング』
  • 肩関節機能解剖・上肢生理学関連資料

この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状については、必ず医療機関を受診し、専門家の判断を仰いでください。