野球をしていて、「股関節が痛い」「脚の付け根が痛い」「骨盤のあたりが痛い」と感じることがあります。
股関節・骨盤周辺の痛みは、痛む場所や痛みが出る動作、痛みが始まった時期などによって、症状の現れ方が異なります。また、痛みを感じている場所と、実際に症状の原因となっている場所が一致しないこともあります。[1][2][4]
そのため、「ここが痛いから、このケガだ」と症状だけで判断するのではなく、
- どこが痛いのか
- どんな動作で痛いのか
- いつから痛いのか
- その後どう変化しているのか
を整理しておくことが大切です。
この記事では、野球選手にみられる股関節・骨盤周辺の痛みを、場所・動作・痛みが始まった時期の3つから整理します。
病名を自分で決めるためではなく、今の症状に気づき、医療機関で伝える情報を整理するために活用してください。
股関節・骨盤の痛みは「場所・動作・経過」で整理する
股関節や骨盤が痛いときは、まず「どこが痛いか」を確認してみましょう。
そのうえで、
- どの動作で痛いか
- いつから始まったか
- 動くと悪化するのか、休むと軽くなるのか
- 練習を続けるとどう変化するのか
などを整理すると、症状を伝えやすくなります。[1][4]
ただし、これらは診断をつけるための自己チェックではありません。
股関節周辺の痛みにはさまざまな原因があり、詳しい病歴や身体診察などを組み合わせて評価する必要があります。[1][2]
場所別|股関節・骨盤のどこが痛い?
股関節の前側が痛い
股関節の前の部分に痛みを感じることがあります。
座った状態から立ち上がるときや、脚を動かしたときなど、特定の動作で気になる場合もあります。[1]
「股関節の前」と感じていても、実際には脚の付け根など、近い場所を指していることもあります。
そのため、痛む場所を指で示したり、「右側」「左側」「前のほう」など、できるだけ具体的に伝えるとよいでしょう。
脚の付け根・鼠径部が痛い
「脚の付け根が痛い」という訴えは、股関節周辺の症状を整理するときに重要です。
股関節周辺の問題では、鼠径部に痛みを感じることがあります。[1][4]
一方で、脚の付け根に近い場所にはさまざまな組織があるため、鼠径部が痛いというだけで、原因を一つに決めることはできません。
「何もしていなくても痛い」のか、「走ると痛い」のか、「脚を動かすと痛い」のかも一緒に確認しましょう。
骨盤の前側が痛い
骨盤の前側に痛みを感じることがあります。
特に成長期の選手では、骨が成長している時期に、骨盤周辺の骨の付着部に関連する問題がみられることがあります。[1][3]
急激な筋収縮などをきっかけに、骨盤周辺の骨の付着部に損傷が起こることもあります。[1][6]
ただし、骨盤の前が痛いからといって、すべてが同じ原因とは限りません。
骨盤の横・外側が痛い
骨盤の横や外側に痛みを感じる場合もあります。
立つ、歩く、走る、脚を動かすなど、日常生活やスポーツ動作の中で痛みが気になることがあります。
痛みが出る場所だけでは判断できないため、「どの動作で痛いのか」「いつからなのか」もあわせて整理しておきましょう。[1][2]
お尻・骨盤の後ろ側が痛い
お尻や骨盤の後ろ側に痛みを感じることがあります。
股関節周辺だけでなく、腰や骨盤周辺の問題が股関節周辺の痛みとして感じられることもあります。[4]
そのため、「股関節が痛い」と思っていても、お尻や腰に近い場所まで含めて、どの範囲が痛いのかを確認することが大切です。
太ももの上のほうが痛い
股関節周辺の症状では、太ももに痛みを感じることがあります。[1][4]
本人は「太ももが痛い」と感じていても、症状の評価では股関節や骨盤周辺も含めて確認することがあります。
特に、
- 太ももの前
- 内側
- 外側
- 後ろ
のどこなのかを整理しておくと、症状を伝えやすくなります。
動作別|どんなときに痛い?
同じ場所が痛くても、どの動作で症状が出るかによって、感じ方は変わります。
「いつ痛いのか」を確認することも、症状を整理するうえで大切です。[1][2]
走る・ジョギングすると痛い
走り始めると痛む、走っているうちに痛みが強くなる、練習後に痛みが残るなど、走る場面で症状が出ることがあります。
まずは、
「普通に歩くときは痛くないが、走ると痛い」
「走り始めから痛い」
「しばらく走ると痛くなる」
など、どのタイミングで痛むのかを整理してみましょう。
ダッシュ・切り返しで痛い
短距離のダッシュや方向転換、急に止まる動作などで痛みが出る場合があります。
このときも、「ダッシュそのものが原因」と決めるのではなく、
- 一歩目で痛い
- 加速すると痛い
- 切り返すと痛い
- 動作の後に痛みが残る
など、症状が出る場面を具体的に整理しておくことが重要です。
打撃動作で痛い
バッティングのときに股関節・骨盤周辺の痛みが気になることがあります。
構え、踏み込み、スイングなど、どの場面で痛みが出るのかを確認してみましょう。
「打つと痛い」というだけでなく、
「踏み込むと痛い」
「スイングすると痛い」
など、具体的な動作まで整理できると、症状を伝えやすくなります。
守備動作で痛い
守備では、しゃがむ、立ち上がる、走る、方向を変えるなど、さまざまな動作を行います。
そのため、
- 構えたとき
- 立ち上がるとき
- 横へ動いたとき
- ボールを追って走ったとき
など、どの場面で痛むのかを確認してみましょう。
股関節を動かすと痛い
脚を前後に動かす、横に動かす、股関節を曲げる、ひねるなど、脚を動かしたときに痛みが出ることがあります。
ただし、自分でさまざまな動作を繰り返して「どこが悪いのか」を判断しようとする必要はありません。
痛みが出る動作を無理に何度も確認するより、普段の練習や日常生活の中で、自然に症状が出る場面を記録するほうが大切です。
歩く・階段など日常生活で痛い
症状が強くなると、スポーツ動作だけでなく、歩行や階段、立ち上がりなどの日常生活でも痛みが気になることがあります。[1]
例えば、
「練習中だけ痛い」
のか、
「練習後も歩くと痛い」
のかでは、症状の受け止め方も変わります。
スポーツだけでなく、日常生活への影響も確認しておきましょう。
股関節・骨盤の痛みは「いつから」始まった?
痛みの場所や動作だけでなく、いつから痛くなったのかも重要です。[1][4]
急に痛くなった
練習中や試合中に、ある動作をきっかけとして急に痛くなることがあります。
特に成長期では、急激な筋収縮などをきっかけに骨盤周辺の骨の付着部に損傷が生じることもあります。[1][6]
ただし、急に痛くなったからといって、原因となるけがを自分で決めることはできません。
痛くなったときの動作や、その直前に何をしていたかを記録しておきましょう。
少しずつ痛くなってきた
「最初は少し気になっただけだったけれど、最近は痛みが強くなった」という場合もあります。
このようなときは、
- いつから違和感があったか
- いつから痛みに変わったか
- 練習量が増えていないか
- 痛みが出る場面が変わっていないか
などを振り返ってみましょう。
痛くなったり、軽くなったりを繰り返す
「練習すると痛いけれど、休むと楽になる」「何日かすると軽くなるが、練習するとまた痛む」という経過をとることもあります。
痛みが一時的に軽くなったとしても、それだけで問題が解決したとは判断できません。
いつ痛みが出て、いつ軽くなるのかを記録しておくと、症状の経過を伝えやすくなります。
症状を整理するときは「場所・動作・経過」を見る
股関節・骨盤周辺の痛みを整理するときは、次の3つを意識すると分かりやすくなります。
| 確認すること | 例 |
|---|---|
| 場所 | 股関節の前、脚の付け根、骨盤の前、横、お尻、太もも |
| 動作 | 歩く、走る、ダッシュ、切り返し、打撃、守備、脚を動かす |
| 経過 | 急に始まった、少しずつ始まった、繰り返している |
さらに、
- 練習中だけ痛い
- 練習後も痛い
- 普段の生活でも痛い
- 休むと軽くなる
- 日ごとに悪化している
なども一緒に整理しておくと、症状をより具体的に伝えられます。[1][2][4]
痛む場所からケガを決めることはできる?
痛む場所や動作だけで、原因となるけがや障害を決めることはできません。[1][2][4]
例えば、「脚の付け根が痛い」という症状があっても、原因が一つとは限りません。
股関節そのものの問題だけでなく、周囲の筋肉や腱などが関係する場合もあります。また、股関節とは離れた場所の問題が、股関節周辺の痛みとして感じられることもあります。[2][4]
成長期の野球選手では、成長に伴う骨格の特徴も含めて評価する必要があります。[1][3]
そのため、
「この場所が痛いから、この病気だ」
と自己判断するのではなく、症状の場所・動作・経過を整理して、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
こんな症状があるときは、無理をしない
次のような場合は、痛みを我慢して練習を続けないことが大切です。
- 痛みが繰り返し出る
- 練習するたびに痛みが出る
- 少しずつ痛みが強くなっている
- 走ることが難しい
- 歩くことにも痛みがある
- 日常生活でも痛みが気になる
- 転倒や衝突などのあとから急に痛くなった
- 急に強い痛みが出た
このようなときは、痛みの程度や経過を整理したうえで、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
特に成長期の選手では、成人とは異なる骨の成長に関連した問題もあるため、痛みを繰り返している場合には放置せず、経過を確認することが重要です。[1][3]
病院で症状を伝えるとき、何を伝えればいい?
股関節・骨盤周辺の痛みで受診するときは、「股関節が痛い」だけでなく、できるだけ具体的に伝えると診察に役立ちます。
① どこが痛いか
例えば、
「右の脚の付け根」
「左の骨盤の前」
「お尻に近いところ」
などです。
指で痛む場所を示せると、さらに分かりやすくなります。
② 何をすると痛いか
例えば、
「走ると痛い」
「ダッシュの一歩目で痛い」
「バッティングの踏み込みで痛い」
などです。
③ いつから痛いか
「今日から」
「1週間前から」
「1か月くらい前から」
など、分かる範囲で伝えます。
④ どう変化しているか
「少しずつ強くなっている」
「休むと軽くなる」
「練習するたびに繰り返す」
など、これまでの経過も伝えましょう。[1][2][4]
このように、場所・動作・経過を整理しておくと、自分の症状を伝えやすくなります。
股関節・骨盤の痛みについて、さらに詳しく知る
症状を整理したら、次に知りたいことに合わせて詳しく見ていきましょう。
「なぜ痛くなるのか」を知りたい
→ 野球選手の股関節・骨盤の痛みはなぜ起こる?
痛みにつながる要因を、野球選手の動作や成長期の特徴も含めて解説します。
「どんなことが考えられるのか」を知りたい
→ 野球選手の股関節・骨盤が痛いときに考えられること
症状から病気を決めつけるのではなく、どのような問題が評価の対象になるのかを整理します。
「練習を続けていいのか」を知りたい
→ 股関節・骨盤が痛いとき、練習を続けていい?
痛みがあるときの練習について考えるポイントを解説します。
「病院に行くべきか」を知りたい
→ 野球選手の股関節・骨盤が痛いとき、病院に行くべき?
受診を考えるときのポイントを整理します。
「どんな検査をするのか」を知りたい
→ 野球選手の股関節・骨盤の検査|X線・MRIなど
医療機関で行われる検査について解説します。
まとめ|まずは「どこ・いつ・どんな動作」を整理しよう
野球選手の股関節・骨盤周辺の痛みは、痛む場所や動作、発症の仕方などによってさまざまな形で現れます。
大切なのは、症状だけから病名を決めることではありません。
まずは、
「どこが痛い?」
「どんな動作で痛い?」
「いつから始まった?」
を整理してみましょう。
さらに、
「練習後も痛い?」
「歩くと痛い?」
「痛みは強くなっている?」
など、その後の変化も確認しておくと、自分の状態を伝えやすくなります。
股関節・骨盤周辺の痛みにはさまざまな原因があり、成長期の選手では成長に伴う特徴もあります。[1][3]
この記事で症状を整理したうえで、必要な情報を調べ、痛みを我慢して練習を続けるのではなく、状況に応じた行動を選ぶことにつなげていきましょう。
参考文献
[1] Sinha R, Ellis HB, Podeszwa DA, Sucato DJ, Morris WZ. Clinical evaluation of the painful adolescent and young adult hip. Journal of the Pediatric Orthopaedic Society of North America. 2024;7:100043.
[2] Calcei JG, Safran MR. Evaluation of Athletes with Hip Pain. Clinics in Sports Medicine. 2021;40(2):221-240.
[3] Giordano BD. Assessment and treatment of hip pain in the adolescent athlete. Pediatric Clinics of North America. 2014;61(6):1137-1154.
[4] Houghton KM. Review for the generalist: evaluation of pediatric hip pain. Pediatric Rheumatology Online Journal. 2009;7:10.
[5] Di Maria F, Testa G, Sammartino F, et al. Treatment of avulsion fractures of the pelvis in adolescent athletes: A scoping literature review. Frontiers in Pediatrics. 2022;10:947463.


