肘のどこが痛むかによって、注意すべきポイントは変わります。
この記事では、「野球肘とは」の記事で触れた「内側・外側・後方」という3つの痛みの場所ごとに、確認しておきたいポイントを整理します。
※このチェックリストは自己診断のためのものではありません。
あくまで状況を整理し、受診を検討する材料とするためのものです。
当てはまる項目がある場合は、受診の目安についての記事も参考に、
医療機関への相談を検討してください。
この記事を読んだら分かること
- 肘の内側・外側・後方、それぞれの痛みで考えられること
- 特に注意したい「外側の痛み」の特徴
- 痛みの場所以外に確認しておきたいポイント
- チェックリストだけで判断してはいけないケース
1.このチェックリストの使い方
野球肘は、「野球肘とは」の記事で解説した通り、一つの病気ではなく、肘のさまざまな部位に生じる障害の総称です。
痛みの場所によって、考えられる負荷のかかり方や注意点が異なります。
このチェックリストは、
「痛みの場所からどんな可能性があるかを知り、受診が必要かどうかを考える材料にする」
ためのものです。
チェックリストの結果だけで「大丈夫」「病院に行かなくていい」と判断しないでください。
気になる項目があれば、自己判断を続けず医療機関に相談することをおすすめします。
2.肘の内側が痛む場合
投球動作では、肘の内側に最も大きな負荷がかかるとされています。
野球肘の中でも、内側の痛みは比較的多く見られる訴え方の一つです。
こんな特徴がないか確認してみてください
- 投球時、特にボールを離す直前〜直後に内側が痛む
- 内側を押すと痛みがある
- 投球数が多い日の後に内側の張りが強くなる
- 内側の痛みとともに、握力の低下や違和感がある
投球動作で肘の内側には繰り返し負荷がかかるため、成長期では骨・軟骨・靱帯・腱などに変化が生じる可能性があります。
「ボールを投げると肘の内側が痛い」という訴えを、単なる筋肉痛や成長痛と自己判断せず、症状が続く場合は評価を受けることが重要です。
3.肘の外側が痛む場合【特に注意】
肘の外側の痛みは、内側に比べると頻度は少ないものの、成長期の選手では特に注意が必要な部位です。
こんな特徴がないか確認してみてください
- 投球時に外側が痛む
- 肘が完全に伸びない、または曲げにくい
- 肘の中で何かが引っかかるような感覚がある
- 外側に腫れがある
- 痛みが繰り返し出ている
外側の痛みには、上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(OCD)と呼ばれる障害が含まれることがあります。
これは成長期の骨・軟骨に生じる障害で、進行するまで自覚症状が乏しいことがあるという特徴があります。
日本の少年野球選手を対象とした超音波検査による調査でも、この部位の異常は年齢によって発生しやすい時期があることが報告されています。
外側の痛み、特に「引っかかる感じ」「可動域の変化」を伴う場合は、内側の痛みよりも早めに受診を検討することをおすすめします。
4.肘の後方(後ろ)が痛む場合
投球動作では、ボールを投げ終わった後の動き(フォロースルー)で肘の後方(肘頭付近)にも負荷がかかります。
こんな特徴がないか確認してみてください
- 投げ終わった後、肘の後ろが痛む
- 肘を完全に伸ばすと後方に痛みが出る
- 後方を押すと痛みがある
- 肘が完全に伸ばせなくなってきている
後方の痛みが続く場合や、肘を完全に伸ばせなくなってきた場合は、自己判断で投球を続けないことが重要です。
5.痛みの場所以外に確認したいポイント
痛みの場所と合わせて、以下のポイントも確認しておくと、状況をより正確に把握できます。
これらは「練習していい?」の記事でも解説した内容です。
- 痛みが出るタイミング(投球時だけ/投球後/日常生活でも)
- 痛みの強さの変化(強くなっている/変わらない)
- 可動域の変化(左右で伸び方・曲がり方に差がある)
- 痛みの持続期間
- 同じ痛みを繰り返しているか
痛みの場所だけでなく、これらの要素を合わせて考えることで、より正確に状況を把握できます。
6.チェックリストだけで判断せず受診を検討したいケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、痛みの場所にかかわらず、チェックリストでの自己判断を終わりにせず、受診を検討してください。
- 痛みが繰り返し出る
- 投球するたびに痛む
- 痛みが徐々に強くなっている
- 肘が伸びにくい、曲げにくい
- 肘が引っかかる感じがある
- 腫れがある
- 日常生活でも痛む
- 痛みがないのに検診で異常を指摘された
詳しくは「受診の目安」の記事で解説しています。
7.年代による違い
痛みの場所ごとの注意点は、年代によっても異なります。
- 小学生〜中学生前半:成長軟骨への負荷を受けやすく、特に外側の痛み(OCDなど)への注意が必要とされています。痛みがなくても検診で見つかることがあるため、症状の有無だけで判断しないことが重要です
- 中学生後半〜高校生:内側の靱帯・腱への負荷が課題になりやすい時期です。投球強度や投球数の増加とともに、繰り返しの痛みに注意が必要です
📝 筆者の経験から
私自身、高校生の頃、投球時に肘の内側に鈍い痛みを感じることがありました。
当時は「内側が痛い=そういうものだ」くらいにしか捉えておらず、痛みの場所によって注意すべき度合いが違うということも知りませんでした。
今このチェックリストを作りながら振り返ると、「外側の痛みの方が実は注意が必要」ということを、当時の指導者や自分自身がもっと知っていれば、選手たちへの声かけも変わっていたかもしれないと感じます。
このチェックリストが、今まさに痛みを感じている選手や、その様子を見ている保護者の方にとって、「これは詳しく確認した方がいいのか、そうでないのか」を考えるきっかけになればと思います。
9.よくある質問
Q1.内側と外側、どちらが危険ですか?
「どちらが危険」と単純に比較することはできませんが、外側の痛みは自覚症状が乏しいまま進行することがある点で、特に注意が必要とされています。
いずれの場所であっても、気になる症状があれば自己判断せず評価を受けることが大切です。
Q2.痛みの場所がはっきりしません。どう考えればいいですか?
無理に場所を特定しようとする必要はありません。
痛みの場所がはっきりしない場合や、複数箇所が痛む場合は、医療機関で直接確認してもらうのが確実です。
Q3.押すと痛いですが、投げるときは痛くありません。大丈夫ですか?
押すと痛みがある(圧痛がある)ことは、投球時の痛みがなくても注意したいサインの一つです。
自己判断で「投げて痛くないから大丈夫」と結論づけないようにしてください。
10.まとめ
- 肘の内側・外側・後方で、それぞれ注意すべきポイントが異なる
- 内側は最も頻度の高い痛みの場所
- 外側は自覚症状が乏しいまま進行することがあり、特に注意が必要
- 後方は肘を完全に伸ばせなくなる変化に注意
- 痛みの場所だけでなく、タイミング・可動域・持続期間なども合わせて確認する
- チェックリストは自己診断の代わりにはならない
11.関連記事
- 野球肘の全体像を知りたい方へ → 野球肘とは?症状・原因・治療・予防・投球復帰まで徹底解説
- 今、練習を続けていいか迷っている方へ → 野球肘で練習していい?休むべき判断ポイント
- 受診するかどうか迷っている方へ → 子どもが肘を痛がったら病院に行くべき?受診の目安
- 筆者について知りたい方へ → 筆者について
12.医学的根拠について
- 日本整形外科学会「野球肘」 | https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/baseball_elbow.html
- 上腕骨内側上顆障害・上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の年齢別頻度に関する調査:Otoshi K, et al. Age-Specific Prevalence and Clinical Characteristics of Humeral Medial Epicondyle Apophysitis and Osteochondritis Dissecans: Ultrasonographic Assessment of 4249 Players. Orthop J Sports Med. 2017;5(5). | https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5446105
- 無症状の肘の異常に関する追跡調査:Shitara H, et al. Risk factor for elbow symptom manifestation in young baseball players with asymptomatic medial elbow abnormalities: a prospective cohort study. Scientific Reports. 2021;11. | https://doi.org/10.1038/s41598-021-92570-9
この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状については、必ず医療機関を受診し、専門家の判断を仰いでください。

