PR

野球肘の予防方法|投球数・休養・身体機能をエビデンスから解説

野球肘の予防方法を示したイラスト 野球肘

「野球肘を予防するには、何をすればいいのだろう?」

そう考えたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは、投球数を減らすことかもしれません。

実際、投球数を管理することは、成長期の野球選手の投球障害を予防するうえで重要な考え方の一つです。

日本でも1995年に日本臨床スポーツ医学会が、小学生について「全力投球数は1日50球以内、試合を含めて週200球を超えない」などの提言を行いました。[1] (rinspo.jp)

一方で、

「投球数だけ守っていれば野球肘を防げる」

とは言えません。

青年野球選手を対象としたsystematic reviewでは、年齢、身長、複数チームでの活動、球速、腕の疲労など複数の要因が投球障害と関連していました。[2]

また、systematic review・meta-analysisでは、腕の疲労した状態で投球することが肩・肘障害と有意に関連していました。[3]

つまり、野球肘を予防するには、

投球負荷+疲労+休養+年間を通した活動量+身体機能

などを組み合わせて考える必要があります。

この記事では、現在分かっている医学的エビデンスと日本の投球管理ルールを整理し、選手・保護者・指導者が実践しやすい形で解説します。

※この記事は一般的な医学・スポーツ医学情報を提供するもので、個別のトレーニング指導や治療を行うものではありません。

痛みがある場合は、予防のための運動を始める前に、必要に応じて医療機関へ相談してください。


この記事を読むと分かること

  • なぜ「投球数だけ」では野球肘予防を十分に説明できないのか
  • 日本と米国の投球数・休養ルールにはどのような違いがあるのか
  • 2026年から日本の学童野球に導入された週間投球数制限とは何か
  • 疲労と投球障害にはどのような関係があるのか
  • ストレッチや筋力トレーニングについて、現在どこまで分かっているのか
  • 複数チームや年間負荷をなぜ管理する必要があるのか
  • 選手・保護者・指導者ができる予防策は何か

1.野球肘の予防は「投球数だけ」では考えない

野球肘の予防について考えるとき、最初に理解しておきたいことがあります。

野球肘は、一つの原因だけで起こるとは限りません。

青年野球選手22研究を対象としたsystematic reviewでは、19の独立したリスク因子が検討され、年齢、身長、複数チームでのプレー、球速、腕の疲労などが投球障害の独立したリスク因子として確認されました。

一方で、投球イニング数、年間試合数、週のトレーニング日数、投球タイプ、肩外旋、肩総可動域などについては、明確なリスク因子とは認められなかった項目もあります。[2] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

これは非常に重要な点です。

予防に必要なのは、

「一つの危険因子を取り除けばよい」

という考え方ではなく、

「複数の負荷や状態を管理して、リスクをできるだけ下げる」

という考え方です。


2.投球負荷を管理する

「投球数を数える」ことは予防の基本

投球数管理は、少年野球の投球障害予防で長く使われてきた方法です。

日本臨床スポーツ医学会は1995年の「青少年の野球障害に対する提言」で、全力投球数について、

  • 小学生:1日50球以内、試合を含めて週200球以内
  • 中学生:1日70球以内、週350球以内
  • 高校生:1日100球以内、週500球以内

などを示しました。[1]

これらは医学的に「この球数以下なら安全」と証明された境界線ではありません。

あくまで、成長期の選手に過度な投球負荷がかからないようにするための提言です。


🔬 日本の提言と現在のルールは分けて考える

日本臨床スポーツ医学会の提言と、現在の競技団体のルールは同じものではありません。

2021年の松浦らの論文でも、日本では1995年に50球/日・200球/週の提言が行われた後、2012年には全日本軟式野球連盟が1日7イニング制限を導入し、

その後、徳島県で1日70球制限が導入され、2019年から全国大会へ投球数制限が導入された経緯が整理されています。[4] (jstage.jst.go.jp)

つまり、

医学会の提言と競技団体の競技規則

を混同しないことが大切です。


3.2026年から学童野球では「1週間」の投球数も管理される

現在の日本の学童野球では、日単位だけでなく、週単位の投球数管理も始まっています。

全日本軟式野球連盟は、2026年シーズンから学童部を対象に、1週間の投球数を210球以内、4年生以下は180球以内とする制限を導入しました。

従来の1日70球以内、4年生以下60球以内の制限に加えたものです。[5] (jsbb.or.jp)

これは、

「今日何球投げたか」だけでなく、「この1週間で合計何球投げたか」

を見る考え方です。

例えば、1日ごとの上限を守っていても、複数の試合や練習が重なれば、週単位の投球負荷が増える可能性があります。

ただし、ここでも、

「210球以内なら安全」

という意味ではありません。

競技団体が設けたルールと、医学的に絶対安全な量は同じではありません。


4.「1日50球」なら野球肘を防げる?

成長期の野球では、「1日50球」という数字を耳にすることがあります。

これは日本臨床スポーツ医学会の提言に由来する重要な数字ですが、

「50球までは安全、51球から危険」

という意味ではありません。[1]

また、投球数制限そのものの効果を検討した日本の研究では、8~12歳の少年野球選手719人を対象に、7イニング制限群352人と70球制限群367人を比較しました。

平均投球数は7イニング制限群98.2球、70球制限群52.5球で、肘痛はそれぞれ40.9%、31.9%でした。

70球制限群では肘痛と肘関節屈曲制限が少ない結果でしたが、研究デザインはretrospective cohort studyであり、70球に制限すれば野球肘を完全に予防できることを証明したRCTではありません。[4] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

🔬 この研究から分かること

対象: 8~12歳の少年野球選手719人
研究デザイン: retrospective cohort study
比較: 7イニング制限 vs 70球制限
主な結果: 70球制限群で肘痛が少なかった
分からないこと: 70球がすべての選手にとって安全な上限であること


5.疲労した状態で投げない

投球数と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが疲労です。

青年野球投手を対象としたsystematic review・meta-analysisでは、10研究から5研究をmeta-analysisに組み入れ、

腕が疲労した状態でプレーすることが肩・肘障害と有意に関連していました。pooled odds ratioは13.32(95%CI 3.22–55.09)でした。[3] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

これは強い関連を示すデータですが、

疲労がある選手は13倍必ず野球肘になる

という意味ではありません。

研究の対象や障害の定義にはばらつきがあり、結果は

「疲労した状態で投球することを避ける価値が高い」ことを支持するものとして捉えます。


疲労をどう確認する?

例えば、

  • ボールがいつもより走らない
  • コントロールが崩れてきた
  • 投球フォームが大きく変わってきた
  • 腕が重い
  • 肘や肩に違和感が出てきた
  • 練習後の疲労が翌日まで強く残る

など、本人の感覚と周囲から見える変化を組み合わせます。

ただし、

「フォームが崩れた=必ず障害が起きる」

と断定するものではありません。


6.休養日をつくる

投球負荷を管理するときは、「何球投げたか」だけでなく、「どのくらい投げない時間を確保したか」も考える必要があります。

若年野球選手を対象としたsystematic reviewでは、不十分な休養が肘の筋骨格系障害のリスクに関係する可能性が報告されています。ただし、休養日数と野球肘の発生を直接結びつける質の高い研究は限られており、「何日休めば安全」と一律に決められているわけではありません。[6]

そのため、休養は、

「野球肘を完全に防ぐための決まった日数」

としてではなく、

「投球による負荷から回復する時間を確保するための負荷管理」

として考えることが適切です。


Pitch Smartでは、投球数に応じて休養日数を設定

米国のMLB・USA BaseballによるPitch Smartでは、年齢別に1日の投球数上限と、投球数に応じた必要休養日数が設定されています。[7]

例えば9~10歳では、

1日の投球数Pitch Smartの休養目安
1~20球休養日なし
21~35球1日
36~50球2日
51~65球3日
66~75球4日

とされています。[7]

ただし、これは米国のガイドラインです。

日本の少年野球選手に、その数字をそのまま「医学的な安全基準」として当てはめるものではありません。

また、Pitch Smartでは休養日だけでなく、複数チームでの活動を避けること、年間の投球量を管理すること、疲労のサインを確認することなども合わせて推奨しています。[7]


「休養日=何もしない」ではない

ここも重要です。

休養日という言葉から、

「野球を完全に休んで、一日中何もしない」

と考える必要はありません。

投球による負荷を休ませる日として考えることができます。

病気や障害の状態によっては、医療者の指導のもとで、

  • 下半身のトレーニング
  • 体幹トレーニング
  • 身体機能のコンディショニング
  • ランニング
  • 技術練習の一部

などを行う場合もあります。

ただし、実際にどこまで運動してよいかは、選手の年齢や状態、障害の有無によって異なります。


重要なのは「チームの休み」ではなく「投球の休み」

例えば、

月曜日:チーム練習なし

でも、

火曜日:自主練習で50球

水曜日:クラブチームで40球

と投げていれば、

「2日間休んだ」

とは言えません。

特に複数チームで活動している選手では、チームごとの投球数を別々に管理せず、選手本人の総投球量として把握することが重要です。

青年野球選手のsystematic reviewでは、複数チームでプレーすることが投球障害のリスク因子として報告されています。[2]


7.複数チームでの活動は、合算して考える

現在の少年野球では、

  • 少年野球チーム
  • クラブチーム
  • 選抜チーム
  • 硬式チーム

など、複数の環境で野球をする選手もいます。

問題になるのは、

それぞれのチームでは投球制限を守っているのに、合計するとかなり投げている

というケースです。

青年野球選手のsystematic reviewでは、複数チームでプレーすることが投球障害のリスク因子として確認されています。[2] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

そのため、

チームごとの投球数ではなく、選手本人の総投球量として記録する

ことが重要です。


8.年間を通した負荷も考える

1日、1週間だけでなく、

1年間を通じて、どれくらい投げているか

という視点も必要です。

Pitch Smartでも、若年選手について年間の投球イニングを制限し、複数リーグでの活動を含めた年間管理を推奨しています。[6]

さらに、青年野球選手のリスク因子については、年齢、球速、腕の疲労、複数チームでの活動など複数の要素が関係しています。[2]

したがって、

「大会シーズンだけ気をつける」

のではなく、年間の競技スケジュール全体を見る必要があります。


9.身体機能を整えることは予防になる?

ここは慎重に考える必要があります。

「肩の柔軟性を上げれば野球肘を防げる」

「体幹を鍛えれば野球肘を防げる」

といった単純な因果関係は、現在の研究からは断定できません。

実際、青年野球選手のsystematic reviewでは、肩外旋可動域や肩総可動域など、身体機能のいくつかについて明確なリスク因子とは認められませんでした。[2]

したがって、

身体機能を評価すること

と、

特定の身体機能を改善すれば野球肘を予防できること

は分けて考える必要があります。


10.ストレッチと筋力トレーニングの研究

ここでは、日本の高校野球投手を対象にした重要な研究があります。

Shitaraらは高校野球投手113人を、

  • ストレッチ群62人
  • 外旋筋力トレーニング群51人

に分け、150日間追跡しました。

肩・肘を含む野球関連上肢障害は、

ストレッチ群:22.6%

筋力トレーニング群:9.8%

でした。筋力トレーニング群では、ストレッチ群より障害発生率が低く、Cox回帰分析でもリスクが低い結果でした。[7] (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)

この研究から、

「外旋筋力トレーニングは、少なくとも高校野球投手において、肩・肘を含む野球関連上肢障害の予防手段として有望」

とは言えます。

しかし、

「ストレッチは意味がない」

「筋トレをすれば全員の野球肘を予防できる」

とは言えません。

この研究は高校野球投手を対象とした研究であり、すべての年代・すべての選手に直接一般化できるわけではありません。[7]


11.身体機能は「予防」ではなく「準備」の視点でも考える

身体機能のチェックでは、

  • 肩関節
  • 肩甲帯
  • 肘
  • 手関節
  • 胸椎
  • 体幹
  • 股関節
  • 下肢

などを必要に応じて評価します。

大切なのは、

「どこが悪いから野球肘になる」という原因探しだけをするのではなく、投球を支える身体機能がどのような状態なのかを確認する

ことです。

また、研究で関連が確認されていない項目についてまで、

「ここを改善すれば予防できる」

と断定しないことが重要です。[2]


12.フォームを直せば野球肘を防げる?

これはよくある疑問です。

結論として、

フォームだけを修正すれば野球肘を防げる、とまでは言えません。

投球フォームや投球時の身体の動きは肘への負荷に関係します。

しかし、青年野球選手のsystematic reviewでは、複数のリスク因子のエビデンスが不一致または不十分であり、野球肘を一つのフォーム上の問題だけで説明することはできません。[2]

したがって、

「フォームを良くする」

こと自体は競技動作の改善として重要ですが、

「フォーム修正=野球肘予防」と単純化しない

ことがこのサイトの基本方針です。


13.捕手・投手というポジションも負荷として考える

野球では投手だけでなく、捕手にも多くの送球機会があります。

前向き研究では、9~11歳の若年野球選手において、投手・捕手であることが肘痛と関連していました。[8] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

ただし、

「投手・捕手なら必ず野球肘になる」

という意味ではありません。

ポジションは、選手が受ける投球・送球負荷を考えるときの一つの情報として捉えます。


14.復帰後の選手ほど「以前の投球量」を急に戻さない

治療・リハビリを終えた選手では、

「痛くなくなったから、以前と同じように投げる」

と戻したくなることがあります。

しかし、投球を休んでいた期間がある場合は、投球負荷を段階的に戻すことが重要です。

具体的な投球復帰については、

→ 野球肘から投球復帰するまでの考え方

で詳しく解説しています。

このページでは、

予防と復帰は別の話ではなく、つながっている

ということだけ覚えておいてください。


15.予防に「絶対」はない

ここは、この記事の最も重要な結論の一つです。

現在の研究から、

「このトレーニングだけで野球肘を完全に予防できる」

「この球数なら絶対に安全」

という方法は確立していません。

野球肘のリスクには、

  • 投球量
  • 疲労
  • 年齢
  • 球速
  • 複数チームでの活動
  • ポジション
  • 身体機能
  • 既往歴
  • 競技環境

など複数の要素があります。[2][3]

したがって、予防は、

「一つの方法で防ぐ」

のではなく、

「複数のリスクをできるだけ減らす」

という考え方で取り組むのが現実的です。


16.年代別に考える野球肘予防

小学生

最優先したいのは、

投球量+休養+疲労

です。

2026年からは全日本軟式野球連盟で週間投球数制限も導入されています。[5]

また、成長期の選手では、痛みや肘の動きの変化を早めに把握することも重要です。


中学生

身体が大きく変化し、競技レベルや投球強度も変化しやすい年代です。

  • 複数チーム活動
  • 投手への転向
  • 球速の上昇
  • 硬式への移行

などによって負荷が変わることがあります。


高校生

投球強度や練習量が増える一方、身体機能のコンディショニングも重要になります。

高校野球投手を対象としたRCTでは、外旋筋力トレーニングによる肩・肘を含む上肢障害の予防効果が検討されています。[7]

ただし、身体機能だけで予防できると考えないことが大切です。


17.選手・保護者・指導者ができること

選手

  • 痛みや疲労を隠さない
  • 投球数を自分でも把握する
  • 試合だけでなく練習での投球も記録する
  • 複数チームでの投球も合算する
  • 疲労が強い状態で無理に投げない

保護者

  • チーム外の自主練習や試合も含めて投球量を把握する
  • 複数チームに所属している場合は全体の負荷を確認する
  • 子どもが痛みを言いやすい環境を作る
  • 「痛くないから大丈夫」と決めつけない

指導者

  • 投球数を記録する
  • チーム外での投球も確認できるようにする
  • 連投や疲労状態を考慮する
  • 投球制限だけでなく、休養日を確保する
  • 痛みを訴えた選手に投球を続けさせない

18.📝 筆者の経験から|「予防」という言葉を知らなかった

私が選手だった頃は、正直なところ「予防」という考え方そのものがほとんどありませんでした。

投げられるなら投げる。

痛くなったら我慢する。

それが当たり前になっていたように思います。

今、柔道整復師・鍼灸師として身体の構造や機能を学び、少年野球のコーチとして子どもたちを見るようになって、以前とは違う視点を持つようになりました。

予防というのは、何か特別なトレーニングを一つ行えば完成するものではありません。

投球量を把握する。

疲労を確認する。

休む時間を確保する。

身体の状態を確認する。

そして、痛みが出たら我慢しない。

そうした小さなことを積み重ねていくことが、長く野球を続けるために大切なのだと思っています。


19.よくある質問

Q1.投球数さえ守っていれば野球肘は防げますか?

いいえ。

投球数管理は重要ですが、それだけで完全に予防できるとは言えません。

腕の疲労、複数チームでの活動、球速、年齢など、複数の要因が関係します。[2][3]


Q2.1日50球なら安全ですか?

「50球までは絶対安全」という意味ではありません。

日本臨床スポーツ医学会の提言として重要な数字ですが、安全と危険の境界線として扱わないことが大切です。[1]


Q3.ストレッチと筋トレ、どちらがいいですか?

高校野球投手を対象とした研究では、外旋筋力トレーニング群で肩・肘を含む上肢障害が少なかったという結果があります。[7]

ただし、対象は高校生投手であり、すべての選手にそのまま当てはめることはできません。


Q4.体が硬いから野球肘になるのですか?

一概には言えません。

青年野球選手のsystematic reviewでは、肩総可動域などが明確なリスク因子とは認められなかった項目もあります。[2]

身体機能を評価することと、「柔軟性不足が野球肘の原因」と断定することは分けて考えます。


Q5.複数チームに所属しています。投球数はどう考えればいい?

チームごとに分けるのではなく、選手本人の総投球量として合算することが重要です。

複数チームでの活動は、青年野球選手の投球障害リスク因子の一つとして報告されています。[2]


Q6.痛みがなければ予防は必要ありませんか?

痛みがないことはもちろん重要ですが、予防は痛みが出てから始めるものではありません。

投球量、疲労、休養、身体機能などを普段から管理することが重要です。


20.この記事で最も覚えてほしい5つのこと

① 野球肘の予防は投球数だけではない

投球量に加えて、疲労、休養、複数チーム、球速、年齢などを総合的に考えます。[2][3]

② 「○球なら絶対安全」という数字はない

50球、70球、210球などの数字は、提言や競技団体のルール、研究上の比較条件として理解します。

③ 疲労した状態で投げ続けない

腕の疲労は青年野球投手の肩・肘障害と強く関連しています。[3]

④ 身体機能は重要だが、「ここを鍛えれば予防できる」と単純化しない

研究によって結果が一致しない身体的要因もあります。[2]

⑤ 予防は「完全に防ぐ」ことではなく、リスクを減らすこと

投球量、休養、疲労、身体状態、競技環境を一つずつ管理していくことが大切です。


21.次に読むべき記事

野球肘の全体像を知りたい方へ

→ 野球肘とは?症状・原因・治療・予防・投球復帰まで徹底解説

練習を続けていいか迷っている方へ

→ 野球肘で練習していい?休むべき判断ポイント

痛む場所を確認したい方へ

→ 野球肘の痛む場所別チェックリスト

病院に行くべきか迷っている方へ

→ 子どもが肘を痛がったら病院に行くべき?|野球肘の受診の目安

検査について知りたい方へ

→ 野球肘の検査|X線・エコー・MRIの違い

治療・リハビリについて知りたい方へ

→ 野球肘の治療・リハビリの流れ

投球復帰について知りたい方へ

→ 野球肘から投球復帰するまでの考え方


参考文献・医学的根拠

[1]日本臨床スポーツ医学会

青少年の野球障害に対する提言

1995年の提言。小学生について全力投球数1日50球以内、試合を含めて週200球以内などを示しています。[1]
日本臨床スポーツ医学会・委員会提言


[2]Norton R, Honstad C, Joshi R, et al.

Risk Factors for Elbow and Shoulder Injuries in Adolescent Baseball Players: A Systematic Review.

Am J Sports Med. 2019;47(4):982-990.
DOI: 10.1177/0363546518760573.
PMID: 29630388.

22研究を対象に、青年野球選手の肩・肘障害に関する19の独立変数を検討。年齢、身長、複数チーム参加、球速、腕の疲労などが独立したリスク因子として確認されました。[2]
PubMed


[3]Salamh P, et al. 2020

Injuries and associated risk factors of the shoulder and elbow among adolescent baseball pitchers: a systematic review and meta-analysis.

Phys Ther Sport. 2020;43:108-119.
DOI: 10.1016/j.ptsp.2020.02.013.
PMID: 32143085.

10研究をsystematic reviewに採用し、5研究をmeta-analysis。腕の疲労した状態での投球が肩・肘障害と有意に関連していました。[3]
PubMed


[4]Matsuura T, et al. 2021

Limiting the Pitch Count in Youth Baseball Pitchers Decreases Elbow Pain.

Orthop J Sports Med. 2021;9(3).
DOI: 10.1177/2325967121989108.
PMID: 33796588.

8~12歳719人を対象に、7イニング制限と70球制限を比較。70球制限群で肘痛が少ない結果でした。retrospective cohort studyであり、因果関係を完全に証明するものではありません。[4]
PubMed


[5]公益財団法人 全日本軟式野球連盟

2026年導入:学童部における一週間に係る投球数制限について

2026年シーズンから、学童部で1週間210球以内、4年生以下180球以内の投球数制限を導入。従来の1日70球以内、4年生以下60球以内に加えて適用されています。[5]
全日本軟式野球連盟


[6]MLB / USA Baseball

Pitch Smart

年齢別に投球数、休養日数、年間投球量などについて推奨を示しています。米国のガイドラインであり、日本の競技環境へそのまま適用するものではありません。[6]
Pitch Smart


[7]Shitara H, et al. 2022

Shoulder stretching versus shoulder muscle strength training for the prevention of baseball-related arm injuries: a randomized, active-controlled, open-label, non-inferiority study.

Sci Rep. 2022;12:22118.
DOI: 10.1038/s41598-022-26682-1.

高校野球投手113人を対象としたRCT。150日間の肩・肘を含む野球関連上肢障害の発生率は、ストレッチ群22.6%、外旋筋力トレーニング群9.8%でした。[7]
PMC全文


[8]Youth baseball prospective cohort study

7~11歳の野球選手900人を1年間追跡した前向き研究。肩痛と肘痛に関連する要因として、投手・捕手、練習時間、既往歴などを検討しました。[8]
PubMed


医学的ファクトチェック

✅ 日本臨床スポーツ医学会は1日50球・週200球を提言している

正確です。

1995年の「青少年の野球障害に対する提言」で示されています。[1] (rinspo.jp)

ただし、安全限界ではありません。


✅ 2026年から学童部の週間投球数制限が導入された

正確です。

全日本軟式野球連盟が、2026年シーズンから210球以内、4年生以下180球以内としています。[5] (jsbb.or.jp)


✅ 疲労は肩・肘障害の重要なリスク因子

支持されています。

Salamhらのsystematic review・meta-analysisでは、腕の疲労した状態での投球が肩・肘障害と有意に関連しました。[3] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)


✅ 複数チーム参加はリスク因子として報告されている

支持されています。

Nortonらのsystematic reviewで、青年野球選手の投球障害に対する独立したリスク因子として確認されています。[2] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)


✅ 70球制限群では肘痛が少なかった

正確ですが、研究デザインの説明が必要です。

Matsuuraらのretrospective cohort studyで、70球制限群31.9%、7イニング制限群40.9%でした。[4] (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

したがって、

「70球制限で野球肘を予防できることが証明された」

とは書かない方が適切です。


✅ 筋力トレーニング群で障害発生率が低かった

正確です。

高校野球投手113人を対象としたRCTで、ストレッチ群22.6%、外旋筋力トレーニング群9.8%でした。[7] (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)

ただし、これは高校野球投手の肩・肘を含む上肢障害についての結果であり、すべての年代の「野球肘」に直接一般化しません。


✅ 肩の柔軟性不足を野球肘の原因と断定していない

これは重要な修正です。

Nortonらのsystematic reviewでは、肩外旋・肩総可動域について、明確なリスク因子とは認められなかった項目があります。[2]

したがって、

「身体機能を評価する」

と

「その機能を改善すれば野球肘を予防できる」

を分けています。