小学生の野球選手が「投げると肩が痛い」と訴えたとき、
保護者として気になるのが、「成長期だから仕方がない痛みなのか」「野球肩なのか」ということではないでしょうか。
前の記事では、小学生が野球で肩を痛がったときに、まず何を確認し、どのように対応すればよいのかを解説しました。
では、その中でも成長期の野球選手にみられる**Little League Shoulder(リトルリーグショルダー)**とは、どのような障害なのでしょうか。
Little League Shoulder(以下、LLS)は、成長期の投球選手にみられる肩の障害の一つです。[1]
LLSは小学生だけに起こる病気ではありません。研究では7歳台から17歳までの症例が報告されており、成長途中の投球選手を対象に考える必要があります。[1]
この記事では、Little League Shoulderの特徴や症状、なぜ成長期の肩で起こり得るのか、診断や治療の基本的な考え方までを、小学生の保護者にも分かるように整理します。
なお、「小学生が肩を痛がる=Little League Shoulder」という意味ではありません。
- Little League Shoulderとは?
- なぜ小学生の肩では「成長板」が重要なの?
- Little League Shoulderでは、どんな症状が出る?
- 「肩が痛い」だけではLittle League Shoulderとは限らない
- 「成長痛だから大丈夫」と考えていい?
- なぜLittle League Shoulderになるの?
- 「50球投げたからLittle League Shoulder」ではない
- Little League Shoulderはどうやって診断する?
- X線では何を見るの?
- Little League Shoulderの治療は「手術」なの?
- Little League Shoulderは、何週間休めば治る?
- 痛みがなくなったら、すぐ投げていい?
- Little League Shoulderは治るの?
- Little League Shoulderを「様子見」していい?
- 病院に行くと、何を調べるの?
- まとめ
- 次に読む記事
- 参考文献・引用設計
- 医療情報の取り扱いについて
Little League Shoulderとは?
Little League Shoulderはどんな障害?
Little League Shoulderは、成長期の投球選手にみられる、投球に関連した肩の障害です。[1]
特に関係するのが、上腕骨の上端にある近位上腕骨の成長板です。
成長期の子どもには、骨が成長するための「成長板」があります。LLSでは、この成長板に投球による繰り返しの負荷が加わることが関係すると考えられています。[1][2]
医学文献では、Little League Shoulderのほかに、近位上腕骨の成長板に関係する障害として、さまざまな表現が使われてきました。
つまり、LLSは単なる「肩が痛い」という症状の名前ではなく、成長期の上腕骨近位部に関係する投球障害の一つです。
ただし、LLSの発症メカニズムについては、まだ十分に解明されているわけではありません。[2]
なぜ小学生の肩では「成長板」が重要なの?
成長期の肩は大人の肩と同じではない
子どもの骨は、大人の骨とは構造が異なります。
成長期には骨の端に「成長板」があり、ここで骨が長く成長していきます。
そのため、成長期のスポーツ障害を考えるときには、
「筋肉や腱だけでなく、成長途中の骨や成長板にも負荷がかかる」
という視点が重要になります。[2]
投球では、肩を大きく動かしながら腕を高速で振るため、肩周辺には繰り返し負荷が加わります。
成長期の投球選手では、こうした繰り返しの負荷を考えるときに、骨格が成熟した成人とは異なる視点が必要になります。[2]
成長板とは?
成長板は、簡単にいえば**「骨が成長する場所」**です。
成長が終わると成長板は閉じていきますが、それまでは成人とは異なる構造をしています。
そのため、成長期の投球障害では、成人の肩の障害とは異なる部位に問題が起こることがあります。
Little League Shoulderを理解するときには、
「子どもの肩は、大人の肩を小さくしたものではない」
と考えることが大切です。
Little League Shoulderでは、どんな症状が出る?
投げると肩が痛い
LLSで特徴的なのは、投球に関連した肩の痛みです。[1]
特に、
- ボールを投げると痛い
- 投球を続けると肩が痛くなる
- 強く投げると痛い
- 投球後に肩が痛む
などの症状がみられることがあります。
痛みが最初から強いとは限りません。
「少し痛いけれど投げられる」という状態から始まり、投球を繰り返すうちに痛みが強くなることもあります。
どこが痛む?
LLSでは、投球側の上腕骨の上端付近に痛みや圧痛がみられることがあります。[1]
ただし、
「肩の前が痛い」
「肩の横が痛い」
といった痛む場所だけでLLSと判断することはできません。
肩の痛みにはさまざまな原因があるためです。
症状が強くなると、日常生活で痛むこともある
症状が強くなると、投球時だけではなく、日常生活でも肩の痛みを感じることがあります。[1][2]
そのため、
「投げると少し痛いだけだから大丈夫」
と自己判断せず、痛みが続く、または繰り返す場合には注意が必要です。
「肩が痛い」だけではLittle League Shoulderとは限らない
ここは、とても重要なポイントです。
小学生が肩を痛がったからといって、Little League Shoulderとは限りません。
小学生の野球選手に起こる肩の痛みには、さまざまな原因があります。
また、「野球肩」という言葉も、一つの病名を意味するものではありません。
そのため、
肩が痛い
↓
野球肩だ
↓
Little League Shoulderだ
と単純に判断することはできません。
LLSを考えるときには、
- いつから痛いのか
- 投球すると痛いのか
- どこが痛いのか
- どの程度痛いのか
- 痛みが続いているのか
- 肩の診察でどのような所見があるのか
必要に応じて画像検査を組み合わせて評価することもあります。
つまり、
「肩が痛い」という症状と、「Little League Shoulder」という診断は同じものではありません。
ということを知っておくことが大切です。
「成長痛だから大丈夫」と考えていい?
成長期だからと決めつけない
小学生は成長の途中にあるため、肩が痛いと、
「成長期だから痛いのかな?」
と考えてしまうことがあります。
しかし、野球をしている子どもが投球に関連して肩を痛がっている場合、「成長期だから仕方がない」とだけ考えるのは適切ではありません。
特に、
- 投げるたびに痛い
- 練習後に毎回痛む
- 痛みがだんだん強くなっている
- 痛みのために投げられない
- 日常生活でも痛む
といった場合には、投球に関連した障害の可能性も考える必要があります。
投球との関係を見る
「成長痛かどうか」を家庭だけで判断するよりも、
「野球の投球と痛みが関係しているか」
を見ることが大切です。
成長期の子どもが肩を痛がった場合、痛みを我慢して投球を続けるのではなく、まず投球を止めて状態を確認することが重要です。
なぜLittle League Shoulderになるの?
LLSの原因を、一つの要因だけで説明することはできません。
投球による繰り返しの負荷
投球では、肩を大きく動かしながら腕を高速で振ります。
これを繰り返すことで、成長途中の肩に繰り返し負荷が加わります。
LLSでは、このような投球による反復ストレスが近位上腕骨の成長板に関係すると考えられています。[1][2]
ただし、発症の仕組みにはまだ分かっていない部分があります。
成長期という身体的条件
成長板が開いていること自体が、成人とは異なる身体的条件になります。
そのため、同じ投球動作をしていても、成長期の選手と成人選手では、負荷が問題になる部位が異なることがあります。[2]
投球量・活動量・休養も考える
成長期の投球障害を考えるときには、単純な「投球フォーム」だけではなく、
- どれくらい投げているか
- どのくらいの頻度で練習しているか
- 試合と練習がどの程度重なっているか
- 十分な休養が取れているか
- 練習や試合が重なって疲労が蓄積していないか
といった要素も考える必要があります。[2]
したがって、
「フォームが悪いからLittle League Shoulderになる」と単純化するのは適切ではありません。
同じように、「投球数が○球だったから発症した」と一つの数字だけで説明することもできません。
「50球投げたからLittle League Shoulder」ではない
小学生の野球肩を考えるとき、「1日50球」という数字を見かけることがあります。
日本の小学生野球選手8,354人を対象とした全国調査では、過去1年間の肩痛は8.0%、肘痛は12.3%、肩または肘の痛みは17.4%にみられました。
また、1日50球を超える投球などと肩・肘痛との関連が報告されています。[3]
ただし、ここで重要なのは、
この研究はLittle League Shoulderの発症を調べた研究ではない
ということです。
したがって、
「50球を超えるとLittle League Shoulderになる」
という意味ではありません。
「50球」はLittle League Shoulderの診断基準でもありません。
投球数は重要な情報の一つですが、選手の年齢、成長段階、活動量、休養などを含めて考える必要があります。
Little League Shoulderはどうやって診断する?
LLSは、「肩が痛い」という症状だけで確定するものではありません。
症状だけでは判断しない
医療機関では、
- 痛みが始まった時期
- 投球との関係
- 痛む場所
- 痛みの程度
- 練習や試合の状況
などを確認します。
さらに肩の診察を行い、必要に応じて画像検査を組み合わせて評価します。[1][2]
診察と画像検査を組み合わせて考える
LLSの評価では、身体診察と画像検査が使われてきました。[1]
特にX線では、上腕骨近位部の成長板の状態を確認します。
ただし、
「X線で成長板に変化がある=それだけで症状の原因が決まる」
と考えることも避ける必要があります。
症状、診察、画像所見を合わせて肩の状態を考えることが重要です。
X線では何を見るの?
LLSが疑われる場合、両肩のX線を比較して評価することがあります。[1][2]
成長板を確認する
LLSでは、投球側の上腕骨近位部の成長板が広がって見えることがあります。[1]
ただし、画像だけを見て保護者がLLSかどうかを判断することはできません。
左右を比較することがある
成長期の肩を評価するときには、投球側だけを見るのではなく、反対側の肩と比較することがあります。[1]
なお、必要に応じてMRIなどの追加画像検査が行われることもあります。
実際に病院では何を診察し、X線やMRIなどで何を調べるのかについては、次の「野球肩の検査」の記事で詳しく解説します。

Little League Shoulderの治療は「手術」なの?
LLSの治療では、投球を休止するなどの保存的な対応が中心となります。[1]
基本は投球を休むこと
まず重要なのは、痛みを我慢して投球を続けないことです。
投球による負荷を減らし、痛みや肩の状態を確認しながら回復を目指します。
必要に応じて、肩の状態を確認しながらリハビリテーションが行われることもあります。
状態を確認しながら復帰する
痛みが落ち着いたからといって、いきなり通常の練習や試合に戻るのではなく、状態を確認しながら段階的に投球へ戻していくことが重要です。[1]
ただし、具体的な休養期間や復帰方法については、研究によってばらつきがあります。
そのため、
「Little League Shoulderなら全員○週間休めばよい」
と一律に決めることはできません。
Little League Shoulderは、何週間休めば治る?
これは保護者から非常によく出る疑問です。
しかし、
「○週間休めば必ず治る」という一律の答えはありません。
症状の程度や経過、診察結果などによって異なります。
LLSに関するsystematic reviewでも、最適な休養期間や段階的な競技復帰の方法について、十分なエビデンスがまだ不足しているとされています。[1]
過去の研究では、症状がなくなるまで投球を休止する考え方が多くみられましたが、近年は症状や状態を確認しながら段階的に復帰する考え方も報告されています。[1][2]
研究の中には症状消失までの期間を報告したものもありますが、その期間をそのまま「標準的な休養期間」と考えることはできません。
大切なのは、
「何週間休むか」だけではなく、「現在の肩の状態がどうなっているか」を確認すること
です。
痛みがなくなったら、すぐ投げていい?
痛みがなくなったことは、回復を考えるうえで重要な変化です。
しかし、
「痛くない=以前と同じ強度・量の投球にすぐ戻してよい」
という意味ではありません。
段階的に復帰する
LLSでは、休養後に段階的に投球へ戻る方法が報告されています。[1]
ただし、研究によって復帰基準にはばらつきがあり、具体的な復帰基準を報告していた研究は限られています。[1]
そのため、投球復帰では、
- 痛みがないか
- 肩の状態に問題がないか
- 投球動作に問題がないか
- 以前と同じ負荷に耐えられる状態か
などを確認しながら進めることが重要です。
「いつから投げられるのか」「どのような順番で投球量を戻すのか」については、投球復帰の記事で詳しく説明します。
Little League Shoulderは治るの?
LLSは、適切に休養・治療を行うことで、多くの選手が症状改善や競技復帰に至ったことが報告されています。[1]
2021年のsystematic reviewでは、十分な追跡が得られた261例で症状消失が報告されています。
また、報告データの範囲では、
- 元の競技レベルに復帰した割合:92.5%
- 何らかのスポーツに復帰した割合:94.0%
でした。[1]
一方で、投球復帰後に症状が再発した選手も報告されており、再発率は報告データの範囲で18.7%でした。[1]
数字をどう受け取ればいい?
ここは注意が必要です。
これらの数字は、
「Little League Shoulderになれば92.5%の子どもが必ず完全に治る」
という意味ではありません。
2021年のsystematic reviewに含まれた23研究のうち、21研究がLevel 4、2研究がLevel 3であり、研究の多くは症例報告・症例集積でした。[1]
そのため、現在分かっている研究からは、
「多くの選手で症状改善や競技復帰が報告されている」
と考えるのが適切です。
同時に、復帰までの期間や再発については個人差があることも知っておく必要があります。
Little League Shoulderを「様子見」していい?
肩の痛みが一度だけ軽く出たからといって、すべてが重大な障害というわけではありません。
一方で、次のような場合には、「成長期だから」「少し休めば大丈夫」と自己判断せず、医療機関への相談を考えた方がよいでしょう。
痛みが続く、または繰り返す
肩の痛みが続いている、または練習のたびに繰り返す場合。
投げるたびに痛む
投球するたびに肩が痛む場合。
痛みのために投げられない
以前のように投げられない、投球を途中でやめるほど痛い場合。
日常生活でも痛む
安静にしているときや、着替えなどの日常動作でも肩が痛む場合。
また、強い外傷のあとに痛みが出た場合や、急に強い痛みが出た場合には、LLSだけを想定せず、別の外傷も含めて評価する必要があります。
「病院に行くべきか迷うとき、何を目安にすればよいのか」は、次の記事で詳しく解説します。
病院に行くと、何を調べるの?
LLSが疑われる場合、病院ではまず、
- いつから痛いのか
- どんな動作で痛むのか
- どこが痛いのか
- 投球量や練習状況
- 痛みが日常生活にもあるのか
などを確認します。
そのうえで肩の状態を診察し、必要に応じてX線などの画像検査を行います。[1][2]
つまり、病院で行うのは「X線を撮って終わり」ではありません。
症状、身体診察、画像検査などを組み合わせて、肩の状態を評価していきます。
では、実際に「小学生の野球肩は病院に行くべきなのか?」
そして、
「病院ではどのような検査をするのか?」
については、次の記事で詳しく解説します。

まとめ
Little League Shoulderは、成長期の投球選手にみられる肩の障害の一つです。
特に、上腕骨近位部の成長板が関係し、投球による繰り返しの負荷が発症に関係すると考えられています。[1][2]
この記事で覚えておきたいのは、次の5点です。
- Little League Shoulderは「肩が痛い」という症状そのものではない
- 成長期の肩では、成長板を含めて考える必要がある
- 50球という数字だけでLittle League Shoulderの発症や診断を判断できない
- 診断では症状・診察・必要な画像検査を組み合わせる
- 治療後は状態を確認しながら段階的に投球へ復帰する
小学生が野球で肩を痛がったときに大切なのは、「何の病気か」を家庭だけで決めつけることではありません。
まず、痛みを我慢して投げ続けないこと。
そして、痛みが続く、繰り返す、投球に支障が出る場合には、医療機関で状態を確認することです。
Little League Shoulderについて知ることは、成長期の肩の痛みを正しく理解し、必要なときに適切な対応をするための第一歩になります。
次に読む記事
小学生の野球肩は病院に行くべき?

「この程度の肩痛なら受診した方がいい?」という保護者の疑問を整理します。
野球肩の検査では何をする?

診察、X線、MRIなど、それぞれの検査で何が分かるのかを解説します。
野球肩の治療・リハビリ

痛みが出た後、どのように回復を目指すのかを解説します。
野球肩から投球復帰するまで
「いつから」「どのように」投球へ戻るのかを解説します。

参考文献・引用設計
[1] Bednar ED, Kay J, Memon M, et al.
Diagnosis and Management of Little League Shoulder: A Systematic Review. Orthop J Sports Med. 2021;9(7).
LLSの定義、症状、診断、X線、治療、休養、競技復帰、予後をこの記事の主軸として支えます。23研究・266例を対象とし、研究の多くがLevel 4であることも重要な限界です。
[2] Myers NL, Kennedy SM, Arnold AJ, et al.
A narrative review of little league shoulder: proximal humeral physis widening is only one piece of the puzzle, it is time to consider posterior glenoid dysplasia. JSES Int. 2024;8(4):724-733.
成長期の投球障害、近位上腕骨成長板、臨床評価について補足する最新レビュー。
[3] Takagishi K, Matsuura T, Masatomi T, et al.
Shoulder and elbow pain in elementary school baseball players: The results from a nation-wide survey in Japan. J Orthop Sci. 2017;22(4):682-686.
日本の小学生8,354人を対象とした全国調査。肩痛8.0%、肘痛12.3%、肩・肘痛17.4%、1日50球超の投球と肩・肘痛との関連を報告しています。
[4] Ina J, Soma D, Camp C, Pulos N.
Treatment and Prevention of Injuries in Skeletally Immature Throwing Athletes. J Am Acad Orthop Surg. 2026;34(2):e151-e160.
2026年の成長期投球選手に関するレビュー。overuse、年間を通したスポーツ参加、休養不足、練習・試合量などを背景として扱っています。
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